
第1回:CDEとは何か?建設業界における情報管理の新常識
はじめに:建設業界の情報管理の“転換点”
建設業界では、報告書や工程表などのドキュメントデータ、写真などの画像データ、CAD図面やBIM/CIM等のモデルデータなど、膨大な情報が日々生成されています。それらの情報はローカル環境、社内サーバ、クラウドサーバなど、様々な環境で管理されているのが現状です。
適切なデータ管理がなされていない場合、以下の問題を引き起こす可能性があります。
- 最新版の図面がどれかわからず、特定に時間がかかる
- 設計と施工で使っているデータが異なっていた
- 維持管理に必要な情報が引き継がれていない
こうした情報の分断は、手戻りや品質低下、責任の不明確化など、現場のリスクを高める要因となっています。
このような課題を解決するために、今注目されているのが CDE(Common Data Environment/共通データ環境)です。
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CDEとは?
CDEとは、建設プロジェクトに関わるすべての情報を一元的に管理・共有するためのデジタルプラットフォームです。
CDEの基本機能
以下はCDEの基本機能です。特にBIM/CIMを活用するプロジェクトでは、CDEの導入が不可欠とされています。
機能 | 内容 |
|---|---|
情報の一元管理 | 図面、BIMモデル、写真、報告書、工程表などを一か所に集約 |
関係者間の共有 | 発注者、設計者、施工者、協力会社などが同じ情報をリアルタイムで確認 |
バージョン管理 | 図面やモデルの更新履歴を管理し、最新版を明確化 |
属性情報の活用 | ファイルに工種、位置、時期などのメタデータを付与し、検索と分析を容易にする |
従来の情報管理との違い
従来の情報管理は紙ベースやローカルファイル中心で、以下のような課題がありました。
- 情報が散在し、探すのに時間がかかる
- 誰がいつ何を更新したかが不明
- 同じ図面の異なるバージョンが複数存在
- 情報の引き継ぎが困難で、維持管理に活かせない
CDEを導入することで、これらの課題を根本から解決できます。情報は資産として蓄積・活用されるべきもの。この考え方が、CDEの根幹にあります。
BIM/CIMとの関係性
CDEはBIM/CIMと密接に連携することで、設計・施工・維持管理の情報をつなぎます。
- BIM/CIMモデルの共有: 3DモデルをCDE上で管理し、関係者が同時に閲覧・コメント可能
- 属性情報の活用: BIM/CIMモデルに付与された属性情報をCDEで検索・分析
- フェーズ間の情報連携: 設計→施工→維持管理の情報が途切れずに引き継がれる
CDEはBIM/CIMの「情報流通基盤」として機能し、デジタルツインの構築にもつながる重要な役割を担っています。
CDEの導入がもたらすメリット

CDE導入のメリットについて主な3点を説明します。
業務効率の向上
- 情報探しの時間を削減
- 最新版の図面・モデルを即座に確認
- コメントや承認の履歴を一元管理
品質と安全性の向上
- 設計変更の即時反映による施工ミス防止
- 過去の施工履歴を活用した予防保全
- トレーサビリティの確保による責任明確化
コスト削減とリスク回避
- 手戻りの削減
- 再発防止策の共有
- 維持管理コストの最適化
CDEは単なるシステムではない
CDEは単なるファイル共有システムではありません。業務の進め方そのものを変える仕組みです。
導入にあたっては、以下のような視点が重要です。
- 業務フローとの整合性: 誰が、いつ、何を登録・更新するかを明確に
- 属性情報の設計: 検索、分析に使えるメタデータを定義
- 現場への教育と支援: ITリテラシーの差を埋める体制づくり
- 運用ルールの整備: 権限管理、承認フロー、履歴管理など
おわりに:次回予告
CDEは、建設業界の情報管理を根本から変える可能性を秘めた仕組みです。しかし、その価値を最大限に引き出すには、業界が抱える情報分断の課題を正しく理解することが不可欠です。
次回では、「なぜCDEが必要なのか?」をテーマに、建設業界の情報管理の現状とリスク、そしてCDEによる解決策を具体的に掘り下げていきます。
伊藤忠テクノソリューションズの取組み

伊藤忠テクノソリューションズでは、今回の記事に関連した「建設業向けのDXソリューション」を提供しております。
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