超音波とは? 超音波の活用でできることや非破壊検査について解説
超音波を利用した機器は、製造や医療など多くの分野で活用されています。超音波の基本的な知識や、超音波を活用してできることを知っておくことで、業務の質の向上や効率化につながる機器の導入を検討する際に役立ちます。
本記事では、超音波の基礎知識のほか、超音波を活用した機器でできること、非破壊検査について解説します。
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超音波とは
超音波とは、“人間に聞こえない周波数”といわれている20kHz以上の高い音波のことです。人間に聞こえる周波数の範囲は、およそ20Hz(ヘルツ)~20kHz(キロヘルツ)で、可聴音とも呼ばれています。
超音波は音や電波と違い、空気中よりも水や金属の中で伝播(でんぱ)力を発揮するのが特徴です。また、超音波の速度は電波や光に比べてゆっくりしているため、短距離の計測がしやすいといえます。
超音波の特徴を生かした機器は、振動エネルギーを利用した“動力的応用”と、情報信号を利用した“通信的応用”に分けられます。具体的な機器の例は以下のとおりです。
▼動力的・通信的応用を用いた機器の例
種類 |
具体例 |
動力的応用を用いた機器 |
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通信的応用を用いた機器 |
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超音波を活用してできること
超音波は、その特徴を生かしてさまざまな分野で活用されています。ここからは、超音波を活用してできることを紹介します。
洗浄
水や金属の中で伝わる超音波の特徴を生かした“超音波洗浄機”は、物を傷つけることなく洗浄できる機器です。
眼鏡販売店で眼鏡を洗浄する際や、製造現場で半導体ウェーハ、LCDガラス(液晶ディスプレイ)などを洗浄するのに活用されています。また、医療現場では、手術用の器具や医師・看護師の手を洗浄するシーンでも役立てられています。
切削・切断
砥石(といし)や刃物に超音波を流した“超音波加工機”は、物をきれいに切削・切断することが可能です。主に、樹脂やプラスチック、基板などのカット・加工に利用されています。
また、崩れやすいケーキ・柔らかいパンも軽い力でカットできます。ただし、石材や金属などの硬い材料は不向きです。
溶着・接合
超音波の振動を利用することで、プラスチックの溶接や金属の接合を短時間で行えます。溶接に使われる機器は“超音波プラスチックウェルダー”“超音波溶着機”などと呼ばれます。
この技術を活用した例の一つに挙げられるのがライターです。ガスを入れる容器と、着火部分のプラスチックを接合する際、接着剤やネジなどを使わずに1秒前後で溶着できます。
そのほか、自動車のプラスチック部品の溶着や、金属端子の接合などにも使われています。
分散・乳化・撹拌
超音波の振動を活用した“超音波分離・乳化機”では、水と油を分散させ、乳化させることができます。
この技術は、食品の酢と油の混合や、インク、乳液、ファンデーションの製造、塗料の脱泡など、さまざまな場面で役立てられています。
計測
超音波が反射する時間や、音速の変化量などを利用した計測器は、さまざまな計測に活用されています。
魚群探知機や金属探知機をはじめ、風速計、流速計、胎児の診断、自動車の衝突回避センサー、車内の防犯センサーなど、多くの分野で重要な役割を担っています。
超音波を用いた非破壊検査
対象物を壊さずに検査する方法を“非破壊検査”と呼びます。超音波を使うことで、さまざまな物を壊すことなく、あらゆる角度から検査できます。
品質チェックの重要性が増すなか、非破壊検査は製造業の現場で欠かせない検査です。この検査では、ネジや電子部品のような小さな対象物から、鉄道、橋のように大きな対象物まで対応できるのが特徴です。
新しい製造品の不具合の有無を確認したり、寿命評価を行ったりするほか、すでにある建物や橋の劣化を調査する際にも役立ちます。また、完成品を壊すことなく検査できるため、サンプル品を製作する必要がなく効率的です。
例えば、自動車や電化製品に用いられているバッテリーは、製造不良による発火事故が発生することもあります。製造時に不良品のバッテリーを排除する手段として、超音波による非破壊検査が進んでいます。
そのほかにも、以下のような検査に非破壊検査が活用されています。
▼超音波による非破壊検査の例
- プラントなどの溶接部の検査
- 航空機や水素タンクなどの複合材検査
- アコースティック・エミッション(AE)を用いたヘルスモニタリング(橋梁、製造部品、水素タンクなど)
伊藤忠テクノソリューションズの超音波に関するソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、溶接部の検査や車室内防犯センサー、各種部品の超音波洗浄など、超音波ソリューションの適用範囲で受託解析・開発・コンサルティングを行っています。
また、超音波シミュレーションコード『ComWAVE』の販売(サブスクリプション)も行っています。
ComWAVEはほかのCAE(※)ソフトでは実現できない100億要素規模の大規模な超音波伝搬解析をクラスタパソコン上で高速に実行できるようにした画期的なシミュレータです。ネジのような小さな対象物から航空機ボディのような大きな対象物まで、あらゆる形状や大きさの物の微細な分析や解析を効率よく実施できます。
※CAE(Computer Aided Engineering:計算機援用工学)とは、コンピューターを使って設計の妥当性を検討・評価する手法全般のこと。
まとめ
この記事では、超音波について以下の内容を解説しました。
- 超音波とは
- 超音波を活用してできること
- 超音波を用いた非破壊検査
- 伊藤忠テクノソリューションズの超音波に関するソリューション
超音波は、振動や音速の変化量などを生かして、洗浄や樹脂・プラスチックの加工、柔らかい食品の切断、プラスチックの溶着、自動車の衝突回避センサーなど、さまざまな場面で活用されています。
また、超音波を活用した非破壊検査を用いることで、製造品の不具合の有無を特定し、品質チェックに役立てることが可能です。品質チェックを効率的に行い、高品質な製品を生産するために、超音波を用いた検査をサポートしてくれるサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
伊藤忠テクノソリューションズでは、さまざまな分野で活用できる超音波ソリューションをご用意しています。ソリューションの一つである『ComWAVE』なら、実験では見ることのできない検査体中の超音波を可視化して、計測エコーの起源を確認します。結果、ノイズやエコーの高さの定量評価に貢献します。
科学システム本部の提供するサービス詳細については、こちらもご参照ください。
engineering-eye:ComWAVE(超音波解析ソフトウェア)
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