非破壊検査とは?適用事例とシミュレーションによる分析手法をご紹介
今回は、非破壊検査とシミュレーションによる分析手法についてご説明します。
非破壊検査は、とても重要な工程で、製品や部品の品質管理に欠かせません。また、シミュレーションによる分析手法は、高い精度で品質を管理することができます。
本記事では、非破壊検査の定義や重要性、超音波を使用した事例、シミュレーションによる分析手法の定義や利点、そして、超音波シミュレーションの概要や具体例について、詳しくご説明していきます。
超音波の活用事例・詳細に関しましては下記記事をご参照ください。
目次[非表示]
- 1.非破壊検査とは?
- 2.超音波をつかった非破壊検査 のメリット
- 3.超音波をつかった非破壊検査の事例
- 3.1.建築構造物の検査
- 3.2.航空機部品の検査
- 3.3.製造業における品質管理
- 3.4.石油・ガス産業
- 3.5.自動車産業
- 3.6.鉄道業界
- 3.7.医療分野
- 3.8.非破壊検査
- 3.9.コンクリート構造物の検査
- 3.10.原子力発電所の検査
- 4.超音波シミュレーションによる非破壊検査
- 4.1.欠陥検出シミュレーション
- 4.2.センサー配置の最適化
- 4.3.信号伝播解析
- 4.4.アーチファクト予測
- 4.5.材料特性の影響評価
- 4.6.シミュレーターベーストレーニング
- 5.伊藤忠テクノソリューションズの超音波・非破壊検査に関するソリューション
- 6.結論
非破壊検査とは?
超音波の様々な利用シーン
はじめに、非破壊検査が何かご存知でしょうか?そんなに有名な技術ではないかもしれませんが、非破壊検査は今や多くの業界で欠かせない技術となっています。
この技術は、機器や構造物などの内部を調べることができ、材料の欠陥検出や耐久性評価に役立ちます。 では、非破壊検査とは何でしょうか?単純に言えば、非破壊検査とは材料や構造物を検査する技術であり、検査対象にダメージを与えることなく内部の様子を確認することができます。
非破壊検査は、製品の品質を向上させ、製品の寿命を延ばすために欠かせない技術であるといえます。 この技術は様々な業界で活用されており、例えば航空宇宙産業や自動車産業では、金属板や機械部品の内部欠陥を検査するのに使われています。
また、建設業では、コンクリートの中の鉄筋の状態を調べるために利用されることがあります。 非破壊検査の定義や利用方法についてご説明しましたが、以下では、超音波を使用した非破壊検査について詳しく説明していきます。
超音波をつかった非破壊検査 のメリット
超音波を使った非破壊検査にはいくつかのメリットがあります。以下にその主な点を説明します。
非破壊性
超音波検査は物体や構造物を破壊せずに内部の欠陥や異常を検出することができます。これにより、検査対象物の損傷や劣化を最小限に抑えることができます。
高精度
超音波検査は高い解像度と精度を持ちます。微小な欠陥や異常を検出することが可能であり、詳細な情報を提供します。
深部探査
超音波は物体の表面だけでなく、内部の深部まで届くことができます。これにより、隠れた欠陥や問題を発見することができます。
幅広い応用
超音波検査は様々な分野で使用されています。例えば、建築物や橋の構造検査、航空機部品の検査、溶接部の品質管理、医療分野における診断など、多岐にわたる用途があります。
迅速な検査
超音波検査は比較的迅速に行うことができます。検査対象物に物理的なダメージを与えることなく、効率的に検査を行うことができます。
リアルタイム監視
超音波検査はリアルタイムで行うことができるため、構造物やシステムの状態を常に監視することができます。これにより、変化や異常の早期検出が可能となります。
安全性
超音波は放射線を使用せず、比較的安全な検査方法です。作業員や環境への健康への影響を最小限に抑えることができます。
超音波をつかった非破壊検査の事例
これらのメリットにより、超音波を使った非破壊検査はさまざまな産業分野で広く活用されています。以下に超音波非破壊検査の一例を示します。
建築構造物の検査
建築物や橋の構造物に超音波を用いて内部の欠陥や劣化を検出します。コンクリート中のクラック
や腐食、鉄筋の位置を調査することができます。
航空機部品の検査
航空機のエンジンや翼部分の構造物に超音波を適用して、隠れた欠陥やクラックを検出します。耐
久性や安全性の確保に重要な役割を果たしています。
製造業における品質管理
製造工程での製品の品質管理に使用されます。溶接部や鋳造部品などの欠陥を検出し、製品の信頼性を向上させます。
石油・ガス産業
タンクやパイプライン内部の腐食やクラックを検出し、安全性を確保するために使用されます。
自動車産業
自動車のエンジンや部品の検査に超音波が利用され、劣化や欠陥を早期に発見して安全性を確保します。
鉄道業界
レールや車両部品の検査に使用され、腐食やクラックなどの問題を検出して運行安全性を確保します。
医療分野
超音波検査は医療診断にも広く用いられます。妊娠中の胎児の観察や内部組織の画像を生成するために超音波が使用されます。
非破壊検査
製造業や建築業などで使用され、金属やプラスチックなどの材料の内部欠陥や損傷を検出します。
コンクリート構造物の検査
建築物や橋のコンクリート中のクラックや腐食を検出し、構造物の耐久性を評価します。
原子力発電所の検査
発電所の設備や配管などの構造物において、腐食や損傷を検出して安全性を確保します。これらは、超音波非破壊検査の一部の具体例ですが、実際には様々な産業分野で広く活用されています。
超音波シミュレーションによる非破壊検査
シミュレーションによる分析手法は、非破壊検査対象物と検査機器をコンピュータ上でバーチャルに再現し、試験検査をシミュレーションする手法です。
この方法を用いると、実際の試験を行うことなく、様々な非破壊検査を模擬することが可能なため、モノを作らず、低価格、高速、高精度に、非破壊検査手法の確立、最適検査方法の検討、検査ノイズの低減などを行うことが可能になります。近年では、特に高精度な検査が必要な航空宇宙産業や自動車産業などで活発に活用されています。
超音波検査におけるシミュレーションは、検査対象物の内部構造や物理的特性を理解し、検査プロセスの最適化や結果の予測に役立ちます。以下に、超音波検査におけるシミュレーションの具体例を示します。
超音波検査シミュレーションの具体例(利用方法)についての具体例は以下の通りです。
欠陥検出シミュレーション
溶接部探傷・ガイド波探傷例
特定の材料中に存在する欠陥(クラック、孔、腐食など)の検出をシミュレーションすることができます。材料内に異なる種類や大きさの欠陥を配置し、超音波がどのように反射・散乱されるかを予測します。これにより、検出限界や感度を評価し、最適な検査条件を見つけることができます。
センサー配置の最適化
超音波センサーの配置最適化例
超音波センサーの配置を最適化するシミュレーションを行います。対象物の形状や材料特性に基づいて、センサーの配置を変えることで、欠陥検出の効率を向上させる方法を探求します。
信号伝播解析
超音波伝搬可視化によるエコー評価例
超音波が材料内部をどのように伝播し、反射されるかをシミュレーションして可視化することがで
きます。これにより、信号の伝播パスを理解し、検査対象物内部の異常を特定するためのガイドラインを作成します。
アーチファクト予測
アーチファクト(誤った信号)をシミュレーションで評価しアーチファクト低減例
超音波検査におけるアーチファクト(誤った信号)をシミュレーションして評価します。異常がない部分からの反射や散乱によって生じるアーチファクトを予測し、それらを本物の欠陥と区別する方法を研究します。
材料特性の影響評価
集束プローブによる配管内の超音波集束および結晶粒による超音波散乱可視化例
超音波が異なる材料中を伝播する際の挙動をシミュレーションして調査します。材料の音響的な特性(音速、吸収係数など)を変化させた場合、超音波の伝播にどのような影響があるかを分析します。
シミュレーターベーストレーニング
シミュレーションによるトレーニング例(実物試験なしに様々な計測を体験可能)
新たな技術者やトレーニング中の人々に対して、実際の超音波検査をシミュレーションで再現するトレーニング環境を提供します。これにより、実践的な経験を積む機会を提供し、実際の検査に対するスキルを向上させます。
これらの具体例は、超音波検査シミュレーションがどのように様々な側面で活用されているかを示しています。シミュレーションを通じて、検査の効率性や品質向上、技術者のトレーニングなどが実現されます。
伊藤忠テクノソリューションズの超音波・非破壊検査に関するソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、溶接部の検査や車室内防犯センサー、各種部品の超音波洗浄など、超音波ソリューションの適用範囲で受託解析・開発・コンサルティングを行っています。
また、超音波シミュレーションコード『ComWAVE』の販売(サブスクリプション)も行っています。
ComWAVEはほかのCAE(※)ソフトでは実現できない100億要素規模の大規模な超音波伝搬解析をクラスタパソコン上で高速に実行できるようにした画期的なシミュレータです。ネジのような小さな対象物から航空機ボディのような大きな対象物まで、あらゆる形状や大きさの物の微細な分析や解析を効率よく実施できます。
※CAE(Computer Aided Engineering:計算機援用工学)とは、コンピューターを使って設計の妥当性を検討・評価する手法全般のこと。
結論
この記事では、非破壊検査とシミュレーションによる分析手法について説明しました。非破壊検査は、物体や構造物の内部を調べる重要な技術であり、品質管理や耐久性評価に不可欠です。
また、シミュレーションによる分析手法は、高精度で品質を管理する手段として活用されています。本記事では、非破壊検査の定義や重要性、超音波を用いた事例について説明しました。
さらに、シミュレーションを通じて非破壊検査を最適化する方法や超音波検査シミュレーションの具体例についても解説しました。
超音波検査とシミュレーションの理解は、品質向上や製品開発において重要であり、産業界で今後ますます活用される技術です。これらの技術の発展により、品質管理や不良箇所の発見がより効率的に行われることが期待されます。
【関連記事】