CFPを算出!仮想空間上の製造ラインでCO2排出量の分析を行うには?
製造現場では、仮想空間上に製造ラインを構築し生産量やリードタイムを定量評価することがこれまでも数多く行われてきました。
生産能力を向上させるためにこういったシミュレーションが行われる一方、カーボンフットプリントに必要なCO2排出量を指標にして分析することはあまりありませんでした。
本記事では、仮想空間上の製造ラインでCO2排出量の分析を行った内容とその結果をご紹介します。
目次[非表示]
- 1.カーボンフットプリントとは
- 2.シミュレーションによるCO2排出量の分析
- 2.1.分析の目的と最適化の条件
- 2.2.結果
- 3.伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス
- 4.まとめ
カーボンフットプリントとは
昨今の深刻な気候変動を受け、全世界的にカーボンニュートラルの取り組みが行われています。
「21世紀後半に、”温室効果ガスの人為的な発生源による排出量”と”吸収源による除去量”の均衡を達成」の実現に向けて、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。
カーボンニュートラルを実現するためには、個々の企業の取組のみならず、サプライチェーン全体での温室効果ガスの排出削減を進めていくことが重要です。排出削減を推進するためには、脱炭素・低炭素製品(グリーン製品)が選択されるような市場を創り出していく必要があり、その基盤として製品単位の排出量(カーボンフットプリント)を見える化する仕組みが不可欠となります。
カーボンフットプリントとは、原材料調達から、生産、流通、使用/維持管理、廃棄/リサイクルに至るまでの製品ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスの環境負荷を定量的に算定する仕組みを指します。
本ソリューションに関連するWITNESSのセミナーが開催されます。興味がある方はご確認ください。
シミュレーションによるCO2排出量の分析
本記事でご紹介するのは、仮想空間上で焼きなまし工程の製造ラインを作成しCO2排出のシミュレーションを行った内容とその結果です。
焼きなまし工程での製造にあたりどれくらいのCO2が排出されるのか、さらにはリソースを変化させることでどれくらいCO2が削減できるのかを分析しています。
分析にあたり、生産現場のプロセス検討で使用される汎用的なシミュレータWITNESSを利用しました。
WITNESSでは、二酸化炭素排出量や電力消費量、コストなどコスト分析したい評価指標を自由に設定することができます。また、稼働時間や処理回数など、マシンリソース、作業員リソース、バッファ、その他設備などそれぞれの状態および動作に詳しく任意のコストを設定することが可能です。さらに、独自のアルゴリズムを用いてコストを最適化することも可能です。
今回作成したのは、10日間の焼きなまし工程のシミュレーションです。
モデルの概要は下記の通りです。
1.焼きなましを行うパーツは2種類(A,B)
2.パーツのフローは(前工程)→「コンベア」→「焼きなまし機前仕掛」→「焼きなまし機」→(後工程)
3.焼きなまし機では、処理するパーツが変わるたびに段取替え作業(温度調整)が発生する
4.焼きなまし機では、故障が発生しオペレーターによって復旧作業が行われる
5.保温庫の最小限稼働によるCO2削減のため、いくつかのパーツBをまとめて処理する運用を想定
6.焼きなまし機は、処理するパーツが変わるたびに温度変更が発生し大量のCO2を排出する
二酸化炭素排出量の設定は、下記のように設定しています。
分析の目的と最適化の条件
今回の分析・検討の目的として、保温庫の容量を調整し、二酸化炭素排出量が最も少ない運用方法を求めることを考えていきます。最適化の分析にあたって下記のように条件を設定しました。
1.実行時間町:14440分(10日)
2.目的関数:二酸化炭素排出量
3.目的関数のターゲット:最小化
4.最適化手法:全解探索法
また、保温庫の探索範囲は1~12個とします。
結果
結果のグラフは下記のようになり、保温庫が6個の時に二酸化炭素排出量が最小になることが分かります。この結果を元に、CO2排出量を最適化する工程リソースの設計が可能になります。
伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス
伊藤忠テクノソリューションズでは、『IntelligentTwinサービス』を展開しています。
製造業を中心に多くの企業がデータの蓄積・活用先としてデジタルツインに積極的に取組んでいますが、「使用するデータが不足している」「取得できないデータがある」「分析技術が足りない」などの課題が挙げられます。
IntelligentTwinサービスでは、これらの課題に対して、AI、シミュレーション、数理最適化を組み合わせて、最適な価値を提供します。
また、生産性向上や新規設備投資計画、人員配置最適化などの課題に対しては、適切な手法の選定から運用フェーズでのモデル精度維持まで、さまざまな形でご支援いたします。
まとめ
以上のように、シミュレーションを使用して、CO2排出量の仮想空間上の再現や、施策検討が可能になります。
焼きなまし工程での処理計画の作成などにも活用できますので、今回のような工程の設計段階だけでなく、運用段階でのCO2排出量削減の取組みを事前検証することも可能になります。
【関連記事】