catch-img

プロセスシミュレーションを用いたCO2排出量シミュレーション

プロセスシミュレーションツールは製造プロセスや物流プロセスをコンピュータ上で再現し、最適化や効率化などの課題解決に役立てることができます。

本ブログでは、プロセスシミュレーターであるWITNESSを用いたCO2排出量シミュレーションについて解説します。具体的には、WITNESSを使ったプロセスモデルの構築方法やパラメータ設定方法、そしてシミュレーション結果の分析方法について詳しく説明します。

WITNESSを用いてCO2排出量を評価することで、カーボンニュートラルをはじめとした取り組みの効果をシミュレーションする方法についても触れていきます。


目次[非表示]

  1. 1.カーボンニュートラルについて
  2. 2.プロセスシミュレーター WITNESS について
  3. 3.カーボンフットプリントとCO2排出量シミュレーション
  4. 4.WITNESSが有するCO2排出量シミュレーションの機能
    1. 4.1.簡単なサンプルのご紹介
  5. 5.伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス
  6. 6.まとめ


カーボンニュートラルについて

2015年にパリ協定では、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、世界共通の長期目標として、「世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)」および「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」等が合意されました。この実現に向けて世界が取り組みを進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。

わが国では年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しておりますが、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目標としており、さらに2050年までにこれを実質ゼロにする必要があります。


なお、カーボンニュートラルについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

  カーボンニュートラルとは? 取組む理由や実現に向けた活動を解説 2020年10月に政府が宣言したことでカーボンニュートラルを知った方もいるのではないでしょうか。カーボンニュートラルは、国だけでなく、企業も取組むとよい施策です。企業が取組むことで、コスト削減や収益化などのメリットがあると考えられています。 しかし、カーボンニュートラルに取組むにあたって、「カーボンニュートラルの基礎から理解したい」「カーボンニュートラルで課題解決につながるサービスがあれば利用したい」と考える担当者の方もいるのではないでしょうか。 本記事では、カーボンニュートラルの概要や、取組んだほうがよい理由と実現に向けた活動の内容を解説します。 Trans Simulation



プロセスシミュレーター WITNESS について



WITNESS(ウィットネス)はLanner Group Ltd.によって開発された離散系・連続系統合型の汎用シミュレーションソフトウェアです。生産工程や物流・交通・事務業務などの様々なプロセスを簡単にモデル化し、アニメーション表示によるシミュレーション実行状況の観察や、自動生成されるレポートを通して、プロセスを的確に理解・評価することができます。


カーボンフットプリントとCO2排出量シミュレーション

カーボンフットプリントとは、原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスの環境負荷を定量的に算定する仕組みのことです。



WITNESSは生産工程や物流工程をコンピュータ上に仮想的に模擬して生産性を評価することができるシミュレーションツールです。WITNESSで模擬できるプロセスであれば、そのプロセスを構成する設備によるエネルギー消費やCO2の発生をカーボンフットプリントの考え方を取り入れて模擬することが可能です。


WITNESSが有するCO2排出量シミュレーションの機能

WITNESSには、CO2排出量シミュレーションモデルを作成し計算するための機能が用意されています。ここでは3つの機能についてご紹介します。



1つ目は、KPI項目を設定する機能です。CO2排出量や電力消費量あるいはコスト(金額)など、シミュレーションで分析したい項目を自由に追加することができます。

2つ目はKPI項目が変化する事象や状態ごとに原単位を定義する機能です。処理回数や処理時間、に応じてエネルギー消費量やCO2発生量の原単位を定義することができます。設備のアイドリング状態や倉庫の保管に掛かる消費あるいは発生原単位を設定することも可能です。

3つ目は様々なシナリオを自動実行し分析する機能です。WITNESSのアドオンツール(本体に付属)であるExperimenterを活用して、CO2排出量に関係するパラメータを自動的に変更して計算し分析することができます。

この機能を用いてパラメータの変化に応じてCO2排出量がどのように推移するのかを手間を掛けずに簡単に分析することができます。


簡単なサンプルのご紹介

WITNESSを用いたCO2排出量シミュレーションの簡単なサンプルモデルをご紹介します。シミュレーション対象の概要は以下の通りです。

・シミュレーション対象:焼きなまし工程

・焼きなましを行う部品は2種類(A, B)

・部品の工程内フローは前工程からの投入からスタートし、「コンベア」→「仕掛用倉庫」→「焼きなまし機」まで

・部品A(図1の緑色)は常温保管でよいため常温庫に保管する

・部品B(図1の紫色)は保温する必要があるため、保温庫に保管する

・焼きなまし機では処理する部品が変わるたびに段取替え作業(温度調整)が発生する

・焼きなまし機では、確率的に故障が発生しオペレータによって復旧作業が行われる


焼きなまし工程モデル(WITNESS画面キャプチャ)


部品の段取替え作業が増えるとCO2排出量が増加します。段取替え作業を減らすために部品Bを一定数溜めてから連続処理すると段取替えは減りますが保温時間および個数が増えるためCO2排出量が増加します。シミュレーションの目的は、部品Bを決まった個数だけ連続処理する場合にCO2排出量が最小となる処理個数を求めることです。


焼きなまし工程モデルに設定した電力消費事象や状態は以下の通りです。消費電力量から換算係数を掛けることでCO2排出量を求めることができます。

・部品Bの保温に掛かる電力消費量

・焼きなまし機への部品の投入に掛かる電力消費量

・焼きなまし機の処理時間に掛かる電力消費量

・焼きなまし機の処理する部品が変わる際の温度変更に掛かる電力消費量


焼きなまし機シミュレーションによるCO2排出量


焼きなまし機の部品B連続処理個数をWITNESS Experimenterにより1から12まで変えて10日間分のシミュレーションを実行したCO2排出量の結果を図2に示します。このサンプルモデルでは連続処理個数が6個のときにCO2排出量が最小になることが分かりました。

伊藤忠テクノソリューションズでは、シミュレーションソフトウェアの販売・サービスを提供しています。本事例詳細に関しましてはこちらの資料をご確認ください。



伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス

伊藤忠テクノソリューションズでは、『IntelligentTwinサービス』を展開しています。

製造業を中心に多くの企業がデータの蓄積・活用先としてデジタルツインに積極的に取組んでいますが、「使用するデータが不足している」「取得できないデータがある」「分析技術が足りない」などの課題が挙げられます。

IntelligentTwinサービスでは、これらの課題に対して、AI、シミュレーション、数理最適化を組み合わせて、最適な価値を提供します。

また、生産性向上や新規設備投資計画、人員配置最適化などの課題に対しては、適切な手法の選定から運用フェーズでのモデル精度維持まで、さまざまな形でご支援いたします。


まとめ

本稿では、CO2排出量シミュレーションを行うことにより、どこでどれだけのCO2が排出されているか分析できること、さらに仮想的に操業条件を変更することでCO2削減効果を検証できることをご紹介いたしました。


WITNESSによるCO2排出量シミュレーションは生産性ボトルネックの分析と同じ手法ですので、生産性とCO2排出量を同じモデルを使って評価することが可能です。たとえば、CO2排出量を一定量に押さえた場合にスループットがどれくらい低下するかということもシミュレーションで検証することができます。


【関連記事】

  デジタルツインとは? 3つのメリットとともに解説 近年、製造業を中心に、デジタルツインの活用が注目されています。 デジタルツインについて耳にしたことがあるものの、「具体的な概要について知りたい」「活用することでどのようなメリットがあるのだろう」と考えている企業の方もいるのではないでしょうか。 この記事では、デジタルツインの概要や注目される背景、メリットについて解説します。 Trans Simulation


  GXとは? 注目を集める理由と2つのメリット GXは政府の施策の一つで、脱炭素社会への取組みは必須と考えられており、大企業だけでなく中小企業でも取組みの輪が広がっています。GXに取組むことで、環境だけではなく企業にもさまざまなメリットがあります。 しかし、GXに取組むにあたって、「メリットが知りたい」「自社のGXを支援するサービスがあれば利用したい」と考える担当者の方もいるのではないでしょうか。 この記事では、GXの概要をはじめ、注目を集める理由やメリットについて解説します。 Trans Simulation





“事例一覧は下記をクリック‼”


人気記事ランキング


キーワードで探す



伊藤忠テクノソリューションズの科学・工学系情報サイト

 

ページトップへ戻る