解析業務を効率化!RPAを活用したCAE解析業務の自動化
これまで、作業の自動化と言えば、プログラムを書いて専用のシステムを構築したり、バッチファイルやEXCELのマクロ機能を活用したりするのが一般的で、高いプログラミングスキルや高度な知識が必要でした。
しかしながら、近年ではRPA技術の進歩により、誰でも簡単に高精度な自動化が可能となっています。現在では、一般企業にもRPAの導入・活用が進んでおりますが、主な用途としては経費精算処理の自動化など事務手続きの自動化に適用されていることが殆どです。
この記事では、皆様が実務で行っているCAE解析業務についてRPA(UiPath)の活用事例や、今後期待される展望をご紹介します。
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RPAとは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、「ロボットによるプロセスの自動化」を意味します。RPAの活用により、ミスが許されない入力作業や簡単な判断を要するような繰り返し作業、アプリケーションやファイル操作、ツールやバッチファイル間の連携などを自動化することができます。
従来、人間が行っていた単純作業をRPAにより自動化することで、ミスが無くなり、業務効率化、生産性向上が期待されます。RPAは働き方改革が推進されている昨今において、無くてはならない技術になっています。
CAE解析業務とRPA
CAE解析業務をされている皆様の中には次のような経験をされている方も多いかと思います。
基準モデルがあり、パラメータや形状を差し替えて大量の計算を実施
- モデルを差し替えて大量の計算を実行する
- 板厚や速度などのパラメータスタディーで大量の計算を流す
- 接触などの解析パラメータの調整で大量の計算を流す
- 解析パラメータの入力ミスで再計算
大量の計算結果を処理
- 大量の解析結果のグラフの作成や図の取得がメインになってしまっている
- 折角グラフを作ったのに、解析結果を取り違えていた
- 解析結果が整理できた頃には納期が間近で考察の時間がない
既存の自動化ツールの連携や計算結果の利活用
- 既存の計算投入や結果処理などのバッチファイルをうまく連携させたい
- 解析結果をBIツールに読み込ませたいけど変換処理が面倒
- 自動化に取り組みたいけどプログラミングが苦手
RPAは上に示したような、CAE解析業務における、「単純な繰り返し作業」「ミスが許されない入力作業」「簡単な判断」「ファイル操作」「ツールやバッチファイルの連携」などを瞬時に行うことができます。
CAE解析業務手順とRPAの適用イメージ
CAE解析業務は主に次のような流れが一般的です。
- モデル作成
- 計算リストの作成
- データ作成
- 計算実行
- 結果処理
- 結果の考察
このCAE解析業務の流れの中で、RPAが特に得意とするのは、3~5の項目になります。
例えば、LS-DYNAを用いたCAE解析業務において、RPAによる自動化が無い場合だと、
このように、大変な労力と時間を要し、解析処理が終わったころには納期が間近に迫っており、十分な考察ができないこともあるかもしれません。
一方で、RPAによる自動化を導入すると、
このようにワンクリックでRPAがデータ作成、計算実行、結果処理までを行います。
入力ミスや計算結果の取り違いなどは起こりません。作業者はRPAが働いている間、別の作業をすることができますし、今解こうとしている解析課題・対策・考察に向き合う十分な時間を得ることができます。ストレスから解放され、業務効率化、生産性向上につながります。
次の章では、CTCで実際に構築した、RPA(UiPath)を用いてCAE解析業務を自動化した例を紹介します。
UiPathを用いたCAE解析業務の自動化例
この章では、LS-DYNAを用いたCAE解析業務について、RPAツールの一つであるUiPathを用いて自動化した例を紹介します。
UiPathは、米国に本社を持つUiPath Inc.が開発したツールです。CTCでは2017年より、国内販売代理店第一号として扱っているRPAツールになります。下図に自動化に用いたLS-DYNAのサンプルモデルを使用します。
このサンプルモデルは、薄板のプレス加工モデルで、1枚の薄板を2つの治具で一定の荷重で押さえつけており、圧子によって一定の速度で薄板をプレス加工します。
ここで例として、次の物理パラメータを変更し、傾向を分析したいと仮定します。
・圧子の速度
・薄板の厚さ
・治具の保持力
下図にケース表の例を示します。このケース表をUiPathに読み込ませ、自動化処理を実行します。ケース表には、ワーキングディレクトリや、ソルバ、PrePostなどの場所や、計算フォルダの名前、ケース名、変更したいパラメータやインクルードファイルの名前などを記載しておきます。
UiPathの処理内容を下図に示します。UiPathに先に述べたケース表を読み込ませると、ケース表に基づき、計算フォルダ、入力ファイルを生成します。次に、計算フォルダ毎に計算を実行します。最後に計算フォルダ毎に結果処理を実行します。
実際の実行例を示します。
・UiPathを起動しワークフローを実行します。
・ケース表を読み込みます。
・自動的にワーキングディレクトリに計算フォルダとDYNAファイルが生成され、計算が実行されます。
・計算が終わると、自動的にLS-PrePostを立ち上げて結果処理(コンター図や荷重履歴の保存など)のを行います。
以上がUiPathによるCAE解析処理の自動化例です。
例では5ケースのデータ作成と計算実行、結果処理でしたが、解析の計算時間を除いて、全ての処理が完了するまでに1分程度で完了します。これが手作業だと、早い人でも1ケース当たり6分程度時間を要しました。5ケースで30分程度かかります。
つまり、RPA(UiPath)の活用により、1/30の時間短縮につながります。RPAのメリットがお分かりいただけたでしょうか?RPAツールの活用によって、作業者の負担を減らし、生産性を向上させることができます。作業者の退屈なタスクをロボットに任せることで、より重要な仕事に集中できるようになります。
もし、あなたが長い間同じ作業を繰り返しているのなら、RPAツールの導入も一考の価値があるかもしれません。次の章では、CAE解析業務とRPAの今後の展望について紹介します。
本ソリューション詳細に関しましては下記資料をご参照ください。
CAE解析業務とRPAの今後の展望
RPAツールを活用した解析業務の自動化では、データ作成や計算実行、結果処理について、大量のケースを間違いなく処理することができます。このメリットを生かした、今後の展望について紹介します。
既に紹介したように、RPAツール(UiPath)を用いることで、大量の計算を流すことが容易になります。加えて、アプリケーション、既に作成してある自動化プログラム、バッチファイルなどの連携も容易になります。そのため、次のような活用方法が考えられます。
- ・大量の計算結果を用いたデータ分析
- ・AIやサロゲートモデルの学習データ作成
- ・他の解析ソルバなどへのデータ授受による異なる物理現象の評価
- ・解析結果を用いた解析モデルの最適化
下図に今後の展望の概要を示します。この記事で紹介したのは「データ作成」、「計算実行」、「結果出力」まででしたが、その先は、解析で得られた結果を決まったフォーマットに変換し、ファイルサーバやデータベースに蓄積していくことが考えられます。
蓄積したデータは「BIツールなどによるデータ分析」、「AI/サロゲートモデルの学習データ」、「他のソルバへのデータ授受」、「最適化」などへの活用が考えられます。RPA(UiPath)は異なるアプリケーションの連携も行えるため、各機能をシームレスに接続し、1つのシステムとして運用することが可能になります。
伊藤忠テクノソリューションズが提供するCAEアドバイザリサービス
伊藤忠テクノソリューションズが提供するCAEアドバイザリサービスは、設計や製造プロセスを改善するための高度な解析技術を利用し、製品の品質向上や生産性の向上など、お客様のビジネスパフォーマンスを高めるためのサービスです。
伊藤忠テクノソリューションズのエキスパートたちは豊富な業界知識と経験を活かし、最適な解決策を提供し、お客様のビジネス成長を支援します。
CAE活用効率最適化、高度なシミュレーション技術、最適なソリューションの組合せなどの課題に対してお困りの方はお問い合わせください。
まとめ
RPAツールを用いることで、ミスが許されない入力作業や簡単な判断を要するような繰り返し作業、アプリケーションやファイル操作、ツールやバッチファイル間の連携などを自動化することができます。
RPAを活用したCAE解析業務の自動化について、CTCが取り組んだ事例を紹介しました。CAE解析業務における、データ作成、計算実行、結果処理の自動化により、作業者の負担を軽減させ、業務効率化、生産性向上に寄与できることが分かりました。
RPAツールを用いて、大量の計算を苦労なく実行できること、アプリケーション間の連携をシームレスに行えることから、蓄積したデータを「BIツールなどによるデータ分析」、「AI/サロゲートモデルの学習データ」、「他のソルバへのデータ授受」、「最適化」などへ活用する将来ビジョンを示しました。少しでも気になった方は、是非CTCへお問い合わせください。そして、RPAを導入し、効果を実感してみてください。
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