【IoTデータの利活用】時系列データ活用のメリット・課題
IoTを利活用する目的には、生産効率化や開発・設計効率化、省エネ、設備の予防保全・予知保全などがあります。
IoT機器を用いて製造・電力・建設現場などの稼働状況を把握することで、設備・機械の異常検知やメンテナンス業務の効率化、コスト削減といった業務改善を進められます。
これらの現場で扱われる、IoTデータの大部分が時系列データです。
製造・電力・建設業の現場において「IoTデータを有効に利活用する方法が知りたい」「IoTデータを活用するシステムを導入したい」とお悩みのご担当者さまもいるのではないでしょうか。
本記事では、IoTデータ利活用の段階とメリット・課題を解説します。
目次[非表示]
- 1.IoTデータ利活用の4つの段階
- 1.1.①データの収集
- 1.2.②データの蓄積
- 1.3.③データ分析
- 1.4.④分析・データに基づく作動・アクション
- 2.IoTデータを利活用する4つのメリット
- 2.1.①生産設備の異常検知
- 2.2.②生産と品質の最適化
- 2.3.③エネルギー消費やコストの削減
- 2.4.④作業場の安全性向上
- 3.IoTデータの利活用における課題
- 4.伊藤忠テクノソリューションズの異常検知ソリューション
- 5.まとめ
IoTデータ利活用の4つの段階
IoTデータの利活用は、データの収集・蓄積・分析・作動の4つの段階で構成されます。
まず、IoT機器で、画像・映像データや環境・位置情報などのデータを収集します。データ分析・蓄積はAIやクラウドで行い、分析結果に基づいて機械が動作するという仕組みです。
ここでは、IoTデータの利活用における4つの段階を解説します。
①データの収集
データの収集は、IoT機器にセンサーを取り付けて、データを収集したい設備に設置することで可能になります。
IoTで収集できるデータは以下のとおりです。
▼IoTで収集できるデータ
種類 |
内容 |
画像・映像データ |
監視カメラで遠隔監視・点検を行う |
音量センサー・温湿度センサー・環境データ |
タービンやボイラーなどの音・温度・圧力などを計測する |
位置情報・行動履歴 |
作業車両や従業員の動態を管理する |
在庫情報 |
在庫数の算出、入出荷量を管理する |
生体情報 |
ヘルメットのセンサーで従業員の健康状態・環境情報を取得する |
②データの蓄積
IoT機器によって収集されたデータは、コンピューターやクラウドに蓄積されます。長期間保管された膨大なデータをビッグデータとよびます。
ビッグデータには、製品データや稼働率、リードタイムなどのさまざまなデータがあります。
製造・電力・建設業で蓄積したデータの利活用によって、業務改善や経営判断につなげることが可能です。
③データ分析
IoT機器によって蓄積されたデータは、AIを活用して分析します。
IoT機器で収集したデータと、過去に蓄積したデータを統合して分析することで、将来の予測や課題解決が可能です。
これまでは、人がデータを分析することが一般的でしたが、AIで迅速・正確にデータを分析するケースも増えています。
▼製造・電力・建設業での予測の例
分野 |
予測検知 |
内容 |
製造 |
異常兆候検知 |
|
電力 |
天候予測 |
|
建設 |
資機材・工事車両の位置情報把握 |
|
④分析・データに基づく作動・アクション
これまで収集・蓄積・分析したデータを利活用することで、実際のIoT機器を作動させたり、従業員のアクションが変化したりします。
分析したデータを基に異常検知や天候などを予測して、プログラムや機械を自動で作動させることが可能です。
自動で作動するケースとしては、スマートフォンへの動作状況通知や、機械やロボットの制御などが挙げられます。
▼分析したデータに基づく作動・アクション例
作動・アクション |
具体例 |
IoT機器の作動 |
天気を予測して、窓の開閉や空調設備の稼働を自動で行い作業場の温度を適切に管理する |
アクション |
従業員のバイタルデータを分析して、体調不良を把握した場合は休憩を促す |
IoTデータを利活用する4つのメリット
IoTデータの利活用には、主に異常検知や品質の最適化、コストの削減や安全性向上の4つのメリットがあります。
①生産設備の異常検知
IoTデータの利活用によって、生産設備の異常を検知できます。
生産設備の異常検知は、現場の熟練技術者でなければ難しいとされています。しかし、生産ラインが24時間稼働する場合は、熟練技術者が常に監視することはできません。
この場合、IoTデータを分析することで、異常や故障を24時間体制で検知可能です。
また、IoTは人による監視と比べて精度の高い監視ができるため、異常兆候管理だけでなく、品質の向上や安定化も期待できます。
②生産と品質の最適化
生産設備にIoTを導入すると、完成品の数や作業に要した時間などの生産状況をデータ収集できるため、生産と品質の最適化が図れます。
収集したデータを分析すると、生産性の低い工程を洗い出せるため、生産性の向上が期待できます。また、データだけではなく、生産状況の可視化を実現することで、業務の自動化や効率化が可能です。
これにより、稼働状況をコントロールして、現場の作業を改善させることにもつながります。
③エネルギー消費やコストの削減
IoTデータの利活用で作業現場の可視化を実現することで、コストの削減が可能です。
たとえば、生産ラインや出荷の流れをデータで分析して、工程の無駄を判断できます。この無駄を省くことで、コスト削減や効率的な生産につながることが期待されます。
また、現場の電力量の管理を行うことで、収集したデータをカーボンフットプリント(※)に活用するニーズも出てきています。
カーボンニュートラルの実現に向けたGXへの取組みを推進することで、持続可能な成長の実現や、企業ブランディングの向上も期待できます。
※カーボンフットプリントとは、製品の原材料調達からリサイクル、廃棄までを通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して製品やサービスに表示する仕組み
カーボンニュートラルの概要については、こちらの記事をご確認ください。
④作業場の安全性向上
IoTデータを分析して、作業場の安全性を高めることも可能です。
たとえば、製造機械や建機にセンサーを付けることで、機械と従業員が接触することを防ぎ、労災の削減につながります。
また、センサー付きのヘルメットやスマートウォッチを従業員に装着させて、従業員の体温や脈拍などのデータを収集することで、健康状態の把握や熱中症の予防・対策を行えます。
IoTデータの利活用における課題
IoTデータの利活用にはメリットがある一方で、さまざまな課題があります。
IoT機器はインターネットに接続しているため、不正アクセスやハッキングなどセキュリティ面でのリスクも発生します。
安全性を確保するためには、強固な認証システムを導入する、またデバイスを監視するチェックポイントを立てるといった対策が重要です。
また、すべてのIoT機器のセキュリティを強化させるには、手間やコストがかかります。製造・電力・製造業において、IoTで扱われる大量のデータの大部分は時系列データです。
そのため、既存のリレーショナルデータベースやNoSQL(Not only SQL:リレーショナルデータベース以外のデータベース)では、時系列データの対応において処理性能やデータ活用の効率性に課題が発生します。
大量時系列データの処理に特化した時系列データベースであれば、性能や圧縮効率が高く、データ量が増えても処理性能が落ちないため、データ利活用の効率化に貢献できます。
伊藤忠テクノソリューションズの異常検知ソリューション
工場や発電所では、さまざまな機器の稼働状況を監視するためのデータが計測されています。これらのセンサーデータ(IoTデータ)を基に、設備における異常の予兆を検知するという活用例があります。
機械学習による異常検知を実現するためには、以下の一連の流れを実行するシステムが必要です。
計測データ活用システムの構成例
- 計測
- 収集・蓄積
- 可視化
- 機械学習による検知
- 通知
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)は、計測よりあとのすべての範囲に関して、検討からシステム構築、運用を支援いたします。
CTCが提供するソリューションは、逐次発生するIoTデータを、時系列データベースの活用で効率よくデータ蓄積・異常兆候管理できる点が特徴です。
また、時系列データベースからデータを取得し、機械学習や可視化ツールに連携します。お客さまの目的に合わせて、適切なツールを組み合わせたデータ利活用によるビジネス課題の解決を支援いたします。
伊藤忠テクノソリューションズでは、時系列データに関わるソフトウェア・解析サービスを提供しています。解析例、ソリューションのイメージなどは、こちらの資料をご確認ください。
まとめ
この記事では、IoTデータについて、以下の情報を解説しました。
- IoTデータ利活用の4つの段階
- IoTデータを利活用する4つのメリット
- IoTデータの利活用における課題
- 伊藤忠テクノソリューションズの異常検知ソリューション
IoTデータは、データの収集・蓄積・分析などによって、IoT機器を作動させたり、従業員が最適なアクションを行ったりすることが可能です。
製造・電力・建設業でIoTデータを利活用することには、精度の高い異常検知や品質の最適化、コスト削減などのメリットがあります。
最近では、GXへの取組みのために、電力量の管理を行うことで収集したデータを、カーボンフットプリントに活用するニーズも出ています。そのため、時系列データベースを活用したIoTデータの収集・蓄積・利活用がますます重要になってきています。
科学システム本部の提供するサービス詳細については、こちらもご参照ください。
engineering-eye:データ活用・AI ― 時系列データ活用システム