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第2回:FEM解析で読み解く都市インフラの未来

はじめに

前回の記事では、都市インフラの老朽化が進む中で、予測型メンテナンスの重要性が高まっていることを紹介しました。今回は、その予測型メンテナンスを支える技術のひとつである「FEM解析(有限要素法)」に焦点を当てます。

FEM解析は、構造物の内部応力や変形を数値的に予測することで、損傷の進行や補強の必要性を科学的に判断するための強力なツールです。土木・建築分野では、橋梁、トンネル、建築物などの安全性評価や補修計画に広く活用されています。

目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.FEM解析とは何か?
  3. 3.都市インフラへの活用例、応用事例
    1. 3.1.橋梁の耐荷重評価
    2. 3.2.トンネルの地盤変形予測
    3. 3.3.建築物の耐震診断
  4. 4.FEM解析のメリットと限界
    1. 4.1.メリット:
    2. 4.2.限界:
  5. 5.予測型メンテナンスとの連携
  6. 6.今後の展望
  7. 7.次回予告
  8. 8.伊藤忠テクノソリューションズの取組み

FEM解析とは何か?

FEM(Finite Element Method:有限要素法)解析は、複雑な構造物を小さな要素(メッシュ)に分割し、それぞれの要素に対して力学的な計算を行うことで、構造全体の挙動を予測する数値解析手法です。

基本的な解析手順は以下の通りです。

  1. モデル化: 対象となる構造物をCADなどで3Dモデル化。
  2. メッシュ分割: 構造物を細かい要素に分割(四面体、六面体など)。
  3. 境界条件の設定: 荷重、支持条件、材質などを設定。
  4. 数値解析: 各要素に対して応力・ひずみ・変形を計算。
  5. 結果の可視化: 応力分布や変形量を色分けして表示。

結果の可視化まで行うと、構造物がどのような力を受けているか、どの部分に応力が集中しているかを詳細に把握することができます。

有限要素法については下記記事でさらに詳しく説明しています。こちらもご参考ください。

都市インフラへの活用例、応用事例

土木建設分野での有限要素法の活用例、応用事例を3つ紹介します。

橋梁の耐荷重評価

交通量の増加や経年劣化により、橋梁には大きな負荷がかかっています。FEM解析を用いることで、荷重がどのように分散されているか、支点や接合部に応力集中が起きていないかを確認できます。これにより、補強が必要な箇所を特定し、効率的なメンテナンスが可能になります。

トンネルの地盤変形予測

地震や地盤沈下などの外的要因によって、トンネル構造に変形が生じる可能性があります。

FEM解析では、地盤の動きと構造物の応答を連成解析することで、将来的な変形や損傷リスクを予測できます。

建築物の耐震診断

既存の建築物に対して、地震波を入力してFEM解析を行うことで、建物の揺れ方や弱点を把握できます。これにより、耐震補強の計画を科学的に立案することが可能です。

FEM解析のメリットと限界

メリット:

  • 高精度な予測:現実に近い構造挙動を再現可能。
  • 可視化による理解促進:応力分布や変形が視覚的に分かる。
  • 補修計画の合理化:損傷の進行を予測し、最適な補修タイミングを判断。

限界:

  • モデルの精度に依存:入力データ(材質、荷重、境界条件)が不正確だと結果も不正確。
  • 計算コストが高い:大規模構造物では解析時間が長くなる。
  • 専門知識が必要:解析結果の解釈には高度な技術力が求められる。

予測型メンテナンスとの連携

FEM解析は単体でも強力なツールですが、予測型メンテナンスの枠組みの中では、センサーや非破壊検査技術と連携することで、さらに効果を発揮します。

例えば、超音波解析で検出された亀裂の位置をFEMモデルに反映させることで、損傷が構造全体に与える影響を定量的に評価できます。これにより、補修の優先順位や方法を科学的に決定することが可能になります。

また、AIや機械学習と組み合わせることで、過去の解析結果や実績データをもとに、将来的な損傷の発生確率を予測することも可能になります。

今後の展望

FEM解析は、今後ますます高度化・自動化が進むと予想されます。クラウドベースの解析環境や、IoTセンサーとのリアルタイム連携により、構造物の状態を常時監視し、異常を即座に検知・解析する仕組みが整いつつあります。

さらに、BIM(Building Information Modeling)との統合により、設計・施工・維持管理の各フェーズでFEM解析を活用する「ライフサイクル型インフラ管理」が現実のものとなりつつあります。

次回予告

次回のブログでは、予測型メンテナンスのもう一つの中核技術である「超音波解析」について詳しく解説します。

目に見えない内部損傷を非破壊で検出する技術が、どのように都市インフラの安全性向上に貢献しているのかをご紹介します。

伊藤忠テクノソリューションズの取組み

伊藤忠テクノソリューションズでは、今回の記事に関連したソフトウェアとソリューションを提供しております。

ソフトウェアの開発・販売だけでなく、それらのカスタマイズ開発や技術サポート、コンサルティングサービスもご提供しています。予測型メンテナンス、FEM解析で課題をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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