catch-img

第3回:デジタルツインプラットフォーム徹底比較|都市・建設・エネルギー業界での選び方

はじめに

前回の記事では、都市インフラ・建設業界・エネルギー分野におけるデジタルツインについて、導入メリットと課題を紹介しました。

各分野でのデジタルツインの成功のためには、プラットフォームの適切な選定が重要です。今回は、主要なデジタルツインプラットフォームの特徴を比較し、業界ごとの選定ポイントを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.プラットフォーム選定の重要性
    1. 2.1.選定時のチェックポイント
  3. 3.デジタルツインの主要なプラットフォーム
    1. 3.1.各プラットフォームの強みと弱み
  4. 4.業界別選定ポイント
    1. 4.1.都市インフラ向け
    2. 4.2.建設業界向け
    3. 4.3.エネルギー分野向け
  5. 5.おわりに
  6. 6.伊藤忠テクノソリューションズの取組み

プラットフォーム選定の重要性

デジタルツインは3Dモデルの表示する機能だけでなく、リアルタイムデータの統合、AIによる分析、IoTとの連携など多岐にわたる機能を必要とします。

今回解説するプラットフォームにはそれぞれ得意分野と苦手分野があり、目的に合ったプラットフォームを選ばなければ導入効果が限定的になります。費用対効果の低減のみならず、逆にコストや運用負荷が増大する可能性もあるため、プラットフォームの選定は慎重に検討すべきです。

選定時のチェックポイント

前提として、分野を問わずプラットフォーム選定に重要なポイントを列挙します。

  1. 自社の目的に合致しているか(都市計画、施工管理、設備保全など)
  2. 既存システムとの連携が可能か(GIS、BIM、ERPなど)
  3. セキュリティ・法制度への対応状況
  4. 導入実績とサポート体制
  5. 拡張性と将来性(AI、AR/VR、5Gとの連携)

デジタルツインの主要なプラットフォーム

デジタルツインに利用できるプラットフォームを10種紹介します。

プラットフォーム名

対象領域

中核技術

対応仕様・標準

Autodesk Construction Cloud

建設・都市

BIM、AI、クラウド、Forge API

Revit、AutoCAD、IFC、PDF、200以上の外部連携

Bentley iTwin Platform

建設・都市・交通・エネルギー

BIM、IoT、リアリティキャプチャ、iModel、iTwin.js

OpenRoads、OpenBuildings、IFC、iModel、Omniverse連携

NVIDIA Omniverse

都市・交通・エネルギー

USD、RTX GPU、AIレンダリング、物理シミュレーション

USD、glTF、Cesium連携、複数ツールとの互換性

Azure Digital Twins

都市・交通・エネルギー

IoT Hub、Graphベースモデリング、Power BI、AI

DPS、IoT Plug and Play、Microsoft製品との統合

Siemens Grid Twin / MindSphere

エネルギー・交通・製造

IoT、AI、PLM、Xcelerator、Omniverse連携

SimReady、Teamcenter X、OPC UA、MQTT

Hitachi Lumada

建設・都市・エネルギー

IoT、AI、ビッグデータ、クラウド

Lumada Edge、Hitachi Cloud、ISO/IEC対応

IBM Maximo Application Suite

エネルギー・交通・製造

IoT、AI、資産管理、予知保全

Maximo Asset、Monitor、Visual Inspection

NEC デジタルツイン

都市・農業・インフラ

映像解析、AI、IoT

NEC AI技術群、画像認識、センサ連携

Cesium

都市・交通・エネルギー

3D地理空間可視化、WebGL、glTF、3D Tiles

glTF、3D Tiles、GeoJSON、KML、CZML

PLATEAU

都市、交通、建設

3D都市モデル、CityGML、オープンデータ、WebGIS

CityGML、GeoJSON、国土交通省標準仕様、LOD対応

各プラットフォームの強みと弱み

プラットフォームには、幅広い分野に適用しやすい汎用型、特定分野に必要な機能が充実している特化型があります。両者の強みを列挙し、紹介したプラットフォームの得意分野と苦手分野を記載します。

  • 汎用型(例:Azure Digital Twins)

    • 幅広い業界に対応
    • 拡張性と柔軟性が高い
    • 自社開発との連携が可能
  • 特化型(例:Bentley iTwin、Siemens Grid Twin)

    • 業界特有の機能が充実
    • 導入までのスピードが速い
    • サポート体制が整っている

プラットフォーム名

特筆機能

得意分野

苦手分野

Autodesk Construction Cloud

施工管理、品質・安全管理、Construction IQによるAI分析

建設BIMに特化、Revit連携、施工管理に強い

運用・保守フェーズには弱く、都市スケールの統合は限定的

Bentley iTwin Platform

SYNCHROによる4D施工、iTwin IoT、リアルタイム更新

インフラ・土木に強く、リアリティキャプチャとIoT統合が得意

操作が複雑で学習コストが高い、軽量表示には不向き

NVIDIA Omniverse

リアルタイム・高精度可視化、VR/AR対応

高精度3D可視化とリアルタイムコラボに強い、物理シミュレーション対応

高性能GPUが必要、建設業務向け機能は限定的

Azure Digital Twins

スマートシティ向け、センサ連携、リアルタイム監視

スマートシティ・IoT統合に強く、Microsoft製品との親和性が高い

BIMや3D可視化機能は限定的、建設業界向けには汎用的すぎる

Siemens Grid Twin / MindSphere

電力網・製造設備の監視、生成AIによる可視化

エネルギー・製造業に強く、PLMや産業機器連携が得意

建設・都市設計には不向き、導入コストが高い

Hitachi Lumada

予知保全、エネルギー管理、社会インフラ向け

社会インフラ・製造向けのデータ統合と予知保全に強み

グローバル展開やBIM連携は限定的、可視化機能は弱め

IBM Maximo Application Suite

設備保守、作業管理、AIによるリスク分析

設備保守・資産管理に特化、AIによる予知保全が得意

3D可視化や都市スケールの統合には不向き

NEC デジタルツイン

インフラ点検、農業支援、国内展開に強み

画像認識・映像解析に強く、農業・インフラ点検に特化

BIMやIoT統合には弱く、汎用性は限定的

Cesium

地球規模の3D表示、CesiumJSによるWeb可視化

地理空間3D可視化に特化、Webベースで軽量な都市表示が得意

BIMやIoT連携は限定的、分析・AI機能は弱い

PLATEAU

日本全国の都市3Dモデルをオープンデータとして提供、都市計画・交通・防災などのシミュレーションに活用可能、Webビューアあり

都市スケールの3Dモデル整備、公共データの活用、自治体・研究機関との連携

リアルタイムIoT連携、AIによる予測分析、施工・設備保守との統合

業界別選定ポイント

これまでの情報から、本シリーズで着目している都市インフラ・建設業界・エネルギー分野での選定ポイントを列挙します。

都市インフラ向け

  • GISとの連携が重要(地理空間情報の活用)
  • 行政システムとの親和性
  • 住民サービスや災害対策への応用

建設業界向け

  • BIMとの統合が必須(設計・施工・維持管理)
  • 現場とのリアルタイム連携(IoT、ドローン)
  • 施工管理や資材最適化への対応

エネルギー分野向け

  • 設備の予知保全機能
  • 電力需給の最適化(AI・シミュレーション)
  • 再生可能エネルギーとの連携

おわりに

デジタルツインの導入は、単なる技術選定ではなく、業務プロセスや組織体制の変革を伴います。目的に応じたプラットフォームを選定することで、都市・建設・エネルギー分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させることができます。

次回は、デジタルツインの未来と戦略的活用について、企業や自治体が取るべきアプローチを解説します。

伊藤忠テクノソリューションズの取組み

伊藤忠テクノソリューションズでは、今回の記事に関連したソフトウェアとソリューションを提供しております。

ソフトウェアの開発・販売だけでなく、それらのカスタマイズ開発や技術サポート、コンサルティングサービスもご提供しています。デジタルツインで課題をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

【関連記事】

“事例一覧は下記をクリック‼”


人気記事ランキング


キーワードで探す



 

関連記事

伊藤忠テクノソリューションズの科学・工学系情報サイト

 

ページトップへ戻る