
第3回:すべてをデジタル化する必要はない
はじめに:「全部やる」は、結局どれも進まない
前回までの記事で、建設業界が抱える課題と、現実的な解決策についてご紹介してきました。しかし、いざデジタル化を進めようとすると、こんな悩みに直面する企業が多いのではないでしょうか?
「何から手をつければいいのか分からない」
「全部やろうとすると、現場が混乱する」
「本当に効果があるのか不安」
そこで今回は、「何を優先してデジタル化すべきか?」を明確にし、優先順位の考え方とその根拠をお伝えします。
目次[非表示]
デジタル化すべき業務と、そうでない業務
優先的にデジタル化すべき業務
業務領域 | 理由 |
図面管理 | 紙図面の差し替えミスや手戻りを防ぐため。クラウド共有で最新版を即時確認可能。 |
工程管理 | 工期遅延のリスクを減らす。リアルタイムで進捗を把握できる。 |
安全管理 | 労災防止・法令対応に直結。写真・報告書の電子化で証跡も残る。 |
原価管理 | 利益確保のために必須。Excelから脱却し、見える化を実現。 |
優先度が低い業務
業務領域 | 理由 |
社内文書の電子化 | 効果が限定的。紙でも大きな問題はない。 |
会議録の自動化 | 導入コストに対して効果が薄い。 |
社内SNSやポータル | 現場との連携には不向きな場合も多い。 |
優先順位の判断基準:この3つで考える
■ 業務インパクト
- ミスが減るか?
- 時間が短縮されるか?
- 利益に直結するか?
■導入コスト
- 初期費用はどれくらいか?
- 社内教育にどれだけ時間がかかるか?
■導入コスト
- 現場がすぐ使えるか?
- スマホやタブレットで対応できるか?
優先順位マトリックスで整理してみよう
優先度 | 業務例 | 理由 |
高 | 図面管理、工程管理、安全管理 | ミス削減・法令対応・利益確保に直結 |
中 | 原価管理、写真管理、勤怠管理 | 効果はあるが、導入に工夫が必要 |
低 | 社内文書、会議録、社内SNS | 効果が限定的、現場との関係が薄い |
「全部やらない」ことが成功のカギ
デジタル化というと、「すべての業務をIT化しなければならない」と思いがちですが、それは誤解です。むしろ、やらないことを決めることが、成功への近道です。
「この業務は紙のままでいい」
「このツールは現場に合わない」
「この機能は今は使わない」
こうした“引き算の判断”が、現場の混乱を防ぎ、定着率を高めます。
現場の声を優先することが、最大の成功要因
経営層や情報システム部門が「良かれと思って」導入したツールが、現場で使われない — これはよくある失敗です。だからこそ、現場の声を最優先に。
「紙の方が早い」と言われたら、なぜそう思うのかを聞く
「スマホで見られるなら使いたい」と言われたら、それを実現する
「この機能は要らない」と言われたら、潔く削る
現場が「使いたい」と思える仕組みこそが、真のDXです。
おわりに:優先順位をつけることは、戦略をもつこと
建設業のデジタル化は、単なるIT導入ではなく、経営戦略の一部です。限られたリソースの中で、どこに投資し、どこを後回しにするか。その判断が、企業の未来を左右します。
次回は、いよいよ最終回。CDEやBIM/CIMを活用した、建設業のデジタル化の進め方について、具体的なステップをご紹介します。
伊藤忠テクノソリューションズの取組み

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