
ベイズ最適化とは?材料開発の実験回数を劇的に削減する手法
材料開発における実験回数の削減や開発期間の短縮が求められる中、ベイズ最適化が注目されています。
本記事では、ベイズ最適化の基礎から材料開発での活用方法までをわかりやすく解説します。
従来の試行錯誤型開発からデータ駆動型開発へ転換したい方必見です。
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)との関連性についても紹介します。
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.ベイズ最適化とは
- 2.1.従来の最適化手法との違い
- 2.2.ベイズ最適化の仕組み
- 3.なぜ材料開発にベイズ最適化が有効なのか
- 3.1.材料開発特有の課題
- 3.2.ベイズ最適化が解決する3つのポイント
- 4.材料開発でのベイズ最適化活用例
- 4.1.合金組成の最適化
- 4.2.プロセス条件の最適化
- 4.3.触媒設計への応用
- 5.ベイズ最適化導入の課題と解決策
- 5.1.課題1:専門知識の不足
- 5.2.課題2:データの前処理と特徴量設計
- 5.3.課題3:実験との連携
- 6.伊藤忠テクノソリューションズの材料開発ソリューション
- 6.1.材料開発ソリューション
- 6.2.材料設計ソフトウェア・データベース
- 7.まとめ
はじめに
新しい材料を開発するには、膨大な実験と長い時間が必要です。合金の組成、プロセス条件、添加剤の配合など、検討すべきパラメータは多岐にわたり、すべての組み合わせを試すことは現実的ではありません。
こうした材料開発の課題を解決する手法として、近年注目を集めているのが「ベイズ最適化」です。ベイズ最適化を活用すれば、少ない実験回数で効率的に最適な条件を見つけ出すことが可能になります。
本記事では、ベイズ最適化の基本的な考え方から、なぜ材料開発に有効なのか、そして実際の活用例までを解説します。
ベイズ最適化とは
ベイズ最適化とは、統計学の「ベイズ推定」を応用した最適化手法です。過去の実験データをもとに、次にどの条件で実験すれば最も効率的に最適解に近づけるかを確率的に予測します。
従来の最適化手法との違い
材料開発における従来の最適化手法には、主に以下のようなものがあります。
従来の最適化手法
手法 | 特徴 | 課題 |
総当たり法(グリッドサーチ) | すべての条件を網羅的に試す | 実験回数が膨大になる |
実験計画法(DOE) | 統計的に効率的な実験点を設計 | 局所最適に陥りやすい |
経験・勘に基づく探索 | 専門家の知見を活用 | 属人的で再現性が低い |
これに対してベイズ最適化は、「探索(未知の領域を調べる)」と「活用(有望な領域を深掘りする)」のバランスを自動的に取りながら、効率的に最適解を探索します。
ベイズ最適化の仕組み
ベイズ最適化は、主に以下の2つの要素で構成されています。
- 代理モデル(サロゲートモデル)実験データから、入力(材料組成やプロセス条件)と出力(材料特性)の関係を確率的にモデル化します。一般的にはガウス過程回帰が用いられ、予測値だけでなく「予測の不確実性」も同時に推定できる点が特徴です。
- 獲得関数次にどの条件で実験すべきかを決定する指標です。予測値が高い点(活用)と不確実性が高い点(探索)のバランスを考慮して、最も情報価値の高い実験点を選択します。
この「実験→モデル更新→予測→実験」のサイクルを繰り返すことで、少ない実験回数で効率的に最適解へと収束させることができます。
なぜ材料開発にベイズ最適化が有効なのか
材料開発には、ベイズ最適化が特に効果を発揮する条件が揃っています。
材料開発特有の課題
材料開発では、以下のような課題が存在します。
- 実験コストが高い:1回の実験に数日〜数週間かかることも珍しくない
- パラメータが多次元:組成、温度、時間、圧力など、検討すべき変数が多い
- 評価が複雑:強度、耐食性、導電性など、複数の特性を同時に満たす必要がある
従来の試行錯誤的なアプローチでは、これらの課題に対応するために膨大な実験が必要でした。
ベイズ最適化が解決する3つのポイント
- 実験回数の大幅削減ベイズ最適化は、過去の実験データを最大限活用して次の実験点を決定します。これにより、総当たり法と比較して実験回数を数分の1〜数十分の1に削減できるケースも報告されています。
- 探索と活用の自動バランス未知の領域を広く探索しつつ、有望な領域を深掘りするバランスを自動的に調整します。これにより、局所最適に陥るリスクを低減しながら、効率的な探索が可能になります。
- 不確実性を考慮した意思決定単なる予測値だけでなく、「どの程度確信を持てるか」という不確実性の情報も提供します。これにより、リスクを考慮した合理的な実験計画が可能になります。

材料開発でのベイズ最適化活用例
ベイズ最適化は、材料開発のさまざまな場面で活用されています。
合金組成の最適化
新しい合金を開発する際、複数の元素の配合比を最適化する必要があります。例えば、5種類の元素を含む合金で、各元素の含有量を1%刻みで検討すると、組み合わせは膨大な数になります。
ベイズ最適化を用いることで、強度や耐食性などの目標特性を満たす組成を、効率的に探索することが可能です。
プロセス条件の最適化
熱処理温度、保持時間、冷却速度など、製造プロセスの条件最適化にもベイズ最適化は有効です。プロセス条件は材料特性に大きく影響するため、最適条件を見つけることは製品品質の向上に直結します。
触媒設計への応用
触媒の活性や選択性を向上させるための組成設計にも、ベイズ最適化が活用されています。触媒開発では、わずかな組成の違いが性能に大きく影響するため、効率的な探索手法が重要です。
ベイズ最適化は、このMIの中核技術の一つであり、AI・機械学習を活用した材料開発の基盤として注目されています。
ベイズ最適化導入の課題と解決策
ベイズ最適化は強力な手法ですが、導入にあたってはいくつかの課題も存在します。
課題1:専門知識の不足
ベイズ最適化を効果的に活用するには、統計学や機械学習の基礎知識が必要です。社内にデータサイエンスの専門家がいない場合、導入のハードルが高くなることがあります。
▼解決策
- 専門的な知識がなくても利用できるツール・プラットフォームの活用
- 外部の専門家やコンサルティングサービスの利用
- 社内人材の教育・研修の実施
課題2:データの前処理と特徴量設計
ベイズ最適化の精度は、入力データの質に大きく依存します。適切な特徴量の選択や欠損値の処理など、データの前処理が重要になります。
▼解決策
- 材料分野に特化したデータ前処理の知見を持つパートナーとの協業
- 過去の実験データの整備・デジタル化
- 材料データベースやオープンデータの活用
課題3:実験との連携
計算結果を実際の実験にフィードバックし、その結果を再度モデルに反映するサイクルを効率的に回すことが重要です。
▼解決策
- 実験計画と最適化を統合したワークフローの構築
- 自動化・ロボット実験との連携
- クラウド環境を活用した計算リソースの確保
伊藤忠テクノソリューションズの材料開発ソリューション

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、材料開発を支援するさまざまなソリューションを提供しています。
材料開発ソリューション
CTCの材料開発ソリューションは、材料開発における以下のニーズに対応します。
- 実験データの管理・活用:各種データをデータベース化し、BIツールを通じた分析を実現
- 実験最適化:ベイズ最適化をはじめとする最適化手法を活用し、効率的な実験計画を支援
- シミュレーション連携:計算熱力学やフェーズフィールドシミュレーションとの統合活用
- ICMEアプローチ:「Materials by Design®」による新材料の設計/ 開発の支援
材料設計ソフトウェア・データベース
CTCでは、材料プロセス設計や合金設計、材料評価などに関するソフトウェア・データベースの販売をしております。
- Thermo-Calc:計算状態図・熱力学計算ソフトウェア
- MICRESS:マルチフェーズフィールド法による合金組織形成計算ソフトウェア
- ICMD®:クラウド型材料開発プラットフォーム(QuesTek)
これらのツールとベイズ最適化を組み合わせることで、より効率的な材料開発が実現できます。
伊藤忠テクノソリューションズが提供する材料開発・設計ソリューションに関しましては下記をご参照ください。
まとめ
この記事では、ベイズ最適化について以下の内容を解説しました。
- ベイズ最適化の基本的な仕組み(代理モデル、獲得関数)
- 材料開発にベイズ最適化が有効な理由
- 合金組成やプロセス条件の最適化など、具体的な活用例
- 導入にあたっての課題と解決策
材料開発の分野では、開発期間の短縮とコスト削減が強く求められています。ベイズ最適化は、従来の試行錯誤型開発からデータ駆動型開発への転換を実現する有効な手法です。
少ない実験回数で効率的に最適解を見つけ出すことで、開発競争力の強化につながります。
伊藤忠テクノソリューションズでは、お客さまの材料開発におけるデータ活用・最適化をサポートしております。ベイズ最適化の導入検討から、既存の材料シミュレーションツールとの連携まで、お気軽にご相談ください。
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