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【JMAC様インタビュー】SXやGX推進の課題解決に役立つシミュレーションソフト

株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)
SX事業本部サステナビリティ経営推進センター
シニア・コンサルティングプランナー  江原 央樹氏(写真右)


今回は、株式会社日本能率協会コンサルティングで多くのエネルギー企業等に向け、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)のコンサルティングでご活躍されている江原さまに取材をさせていただきました。江原さまは全国各地の民間企業や地方自治体のエネルギー産業支援に取り組まれ、総務省地域力創造アドバイザーにも登録されています。

本インタビューでは江原さまに企業のSX/GXに関する現在の課題と今後の展望について事例とともにおうかがいしました。(以下敬称略、役職当時)



略歴と専門分野、担当業務について教えてください。

江原:映像設備機器、半導体の専門商社で営業・マーケティングを経験し、2006年に入社しました。それ以来、電力・ガス・石油業界の企業さまの事業と経営の課題を把握し、コンサルティングや教育を提案するコミュニケーションパートナーとしての活動を行なっています。

また、東日本大震災後の2012年からは、弊社としてもエネルギー産業における産業化をどう考えるかというなかで、再生可能エネルギーの導入やスマートコミュニティ、エネルギーマネジメントシステムの新産業化に取り組むようになりました。それを行う際に必要な、自治体と企業のマッチングを主導する地域導入支援活動のリーダーを担当してきました。

専門分野は、エネルギー全般といえます。業界としては電力・ガス・石油ですが、それに付随するものづくりなども含め、全体を把握している方かなというところです。


太田垣:最近、特に取り組まれている業務について教えていただけますか。


江原:農林水産省の事業などでもあるのですが、いわゆる糞尿をバイオガスに変えることでエネルギーに変えて使ったり、消化液を肥料にしたりして循環させるような取り組みを支援しています。弊社でもサーキュラーエコノミーの研究会を立ち上げました。

今後、日本は人口減に伴いごみが減っていく方向ですが、食料やエネルギー、原料の自給率向上は依然として課題です。自給率が低いなかで物価が高騰したり、輸入ができなかったりすることを踏まえるとサーキュラー化は非常に重要で、そうした事業が増えてこないとサーキュラーエコノミーも実現できません。現在はその辺りの研究を進めています。



SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)でのコンサルティングでご活躍ですが、環境への配慮や持続可能性を重視した取り組みで特に重要となる点を教えてください。

江原:SXやGXは言葉が先行しがちな一方、概念は広過ぎてわかりにくいと思っています。要は地球環境や社会、企業のサステナビリティ=持続可能性を高めることが重要です。その実現のために、化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心に転換することが必要だという流れがあるのであって、単にGXに取り組めば持続可能性が高まるということにはなりません。

また、持続可能性を脅かすリスク、つまり不確実性の要素にはどのようなものがあるのか、その不確実性がもたらすプラスの影響やマイナスの影響はどういったことがあり得るのかを明確にしなければならないと考えています。GXで例えると、気候変動リスクの高まりにより、自然災害が多発したり生態系が変化したりすることで、人々の暮らしの持続可能性を脅かすマイナスの影響が広範囲に生じつつあります。

このマイナスの影響の対策を講じるには、その原因・要因を把握しなくてはなりません。気候変動は温暖化が要因ではないか、さらに、温暖化は温室効果ガスの増加が原因ではないかと把握するところから、温室効果ガスの排出や大気中の量を減らすための取り組みを考えることができ、そこでやっと「クリーンエネルギー」という手段が見えてくるのです。

持続可能性を高める=気候変動リスク対応だけではありませんので、やはりどのようなリスクがあるのかを、企業も含めた皆でしっかりと把握することが重要だと考えています。



GXを推進するために、具体的な戦略やプロジェクトを実施している企業の事例を教えてください。

江原:取材をした企業の事例では 、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと捉え、経営方針も立てられています。「自社における温室効果ガス(GHG)排出量削減」とともに「お客さまの現場におけるCO2削減」を掲げ、両方に具体的かつ積極的に取り組んでおられ、CDP2023でも最高評価Aランクを獲得 されました。

今や多くの企業が、自社の活動におけるCO2削減に取り組まれています。勿論それも大切ですが、一方で、自社の製品やシステムをお客さまである他の企業が導入されると、それを使う企業側のCO2削減につながるという点が、非常に良い取り組みだと思っています。



GXにおいて、特に課題となるポイントは何でしょうか?

江原:戦略と実行、二つの面があると考えています。戦略面では「自社の事業活動を通じた企業コンプライアンス」の観点と「社会貢献」の観点の両面で、目的や目標の明確化が重要です。

GXに関する具体例としては「自社の事業活動上の温室効果ガス排出の低減」「自社の製品・サービス等の提供によるお客さまや社会の温室効果ガスの低減」という、それぞれの目標値を設定することといえます。

先ほどの企業の例で、我々もヒントを得ることができました。ここがしっかりと立てられているかは企業によってまちまちですが、重要なポイントの一つといえます


池田:戦略や方針を策定する際にリソースとなるデータは、どのようになっていますか?


江原:GHGプロトコルという、CO2排出についてルールに基づき実態を算定する基準があります。Scope1・2の自社で使用している燃料や熱、電気の排出量については伝票などからおよそ把握できるのですが、Scope3のカテゴリーに該当するサプライチェーン全体の排出量や、取引先から仕入れている分までとなると、大量に仕入れていますし、どの製品がどれだけCO2を出しているのか、作るまでにはどうかというところを算定するのは非常に難しいです。

(Scope3には)それ以外のカテゴリも数多くありますが、自社がどう算定するべきなのか、考え方や範囲を決めるのに苦慮されている企業さんがとても多いです。ルールに沿って算出はしていますが、データ取りは非常に難しく、課題も多いというのが現状です。



経営層と現場の意識のずれを感じることはありますか?

江原:ある企業では、投資家からサステナビリティに関する取り組みをしないと今後は出資をしない、という話が出て、経営者はそれに応えようと経営課題として据え、環境推進部門を作って部長も立てて……と進めようとしたのですが、現場からは反発がありました。

生産現場からは「そんなことはできない」、「コストがかかる」、営業からは「関係がない(必要性を感じない)」などの声があったそうです。意識のずれという意味では「自分ごと」として、当事者意識を持つことがポイントになります。

2022年5〜6月に、弊社を含めた日本能率協会グループ3社により「サステナビリティ経営課題実態調査2022」を行い、上場企業188社を含む202社の回答を得ました。その設問のなかで、10年後を見据えた経営をしている企業は、そうではない企業に比べ「経営者から一般職まで当事者意識を持っている」と答えた割合が3倍以上でした。

この結果は、経営層の明確な方針とリーダーシップが重要であることを示唆しています。



GXを進めていく上で複数の部署の連携が必要だと認識しています。お客さまのGXを支援する際、どのように推進をされているのでしょうか?

江原:サプライチェーンや製品ライフサイクルにおけるCO2排出算定や省エネ・再エネ導入施策の実行には、本社だけではなく全社部門、グループ会社や取引先などの協力が不可欠です。

まずは自社の関係各部門から検討メンバーを募り、取り組みの必要性や考え方について共通認識化するため、教育やグループワークを実施します。

その後、具体的な検討項目に沿って各部門が情報収集や調査を行い、定期的な検討会にてその内容を共有・討議し、次のアクションを決定します。こういった形で進めていくことで、当事者意識の醸成と活動促進を図っています。



弊社ではシミュレーションや数理最適による顧客課題の解決を支援しています。上記の課題 に対しシミュレーションやデータ分析を活用している企業はありますか?

江原:CO2の排出削減目標を設定する際には、2030年に向けて事業規模がどの程度拡大していくかのシミュレーションを行います。その際、例えば製造業であれば生産量、サービス業であれば売上や店舗数などに着目します。

そして、成長率に比例して排出量が増えていく相関があるかを分析し、相関が認められれば、成長率に応じた排出量予測を立てます。ただ、排出量の実態を把握するデータ収集がまだまだ難しく、生産管理上のデータから換算するなどの対応が必要です。ある運搬船の企業が自社の配置計画にシミュレーションを活用していると聞きました。

それぞれがたくさんの燃料を使って常に動いているので、日々の最適配置を計画するのが本当に大変なようです。そこでシミュレーション技術を用いて効率化し、結果的に省エネにもつながっているそうです。



今後、デジタルツインなどよりリアルタイムに近いシミュレーションが必要ではないかと考えていますが、シミュレーションの役割や期待すべき点についてご意見があればお聞かせください。

江原:再エネ導入の投資回収という側面において原資となりうる省エネなどのコスト削減効果を具体的に出すためには、エネルギーの利用状況をリアルタイムで把握し、ピークシフトやピークカットといった施策の実行が重要です。

その実績値を蓄積すれば、エネルギー消費特性をより正確に分析でき、課題発見や解決策の検討につながるだけでなく、より高い効果を出せるようになります。

また、太陽光発電など天候に左右されやすいエネルギーを活用する場合には、発電予測の精度が求められるため、天候予測と連動したシミュレーションが必要になります。



(ご担当の業界で)SXやGXの今後の展望についてお聞かせください。

江原:新型コロナウイルス感染症、ウクライナや中東の政情不安など、気候変動以外のリスク要因が増えています。企業や日本のサステナビリティを高めるためには、地球環境、社会レベルでのリスク予測の精度を高めることが重要になると考えています。

弊社でもそうした認識の下、2024年3月にサプライチェーン上の今後のリスク対応をテーマとした「サステナビリティ経営交流会」を立ち上げます。エネルギーインフラ、化学、レジャー、印刷など、さまざまな業種の企業の参加を予定しており、危機意識の高まりを感じています。ぜひ、より多くの業界・企業の皆さまとSX・GXに取組んでいければ幸いです。




本インタビュー記事に関連するCTCのソリューション紹介はこちらをご参照ください。



インタビュイー紹介

江原 央樹 氏

東京都立大学経済学部(情報・医療・公共経済学専攻)卒業後、映像設備機器専門商社、半導体専門商社にて海外製品の営業・マーケティング・受発注・在庫管理・技術/品質保証サポート等の業務に従事し、その後2006年に(株)日本能率協会コンサルティングに入社。

東京を拠点とし、大手電力・ガス・石油などのエネルギー企業を中心にコンサルティングおよび教育に関するソリューション提案活動を行うとともに2012年度から、全国区で、再生可能エネルギー等の地域課題解決への有効活用に向けたエネルギー産業支援を目的とした情報発信ならびに新ソリューションの企画を推進。中央省庁、地域の経済産業局や自治体との間に幅広いネットワークを有し、2022年度より、SX事業本部立上げに関わり、カーボンリサイクル、水循環等サーキュラーエコノミーに関連した産業化に向けて、各種支援活動を行っており、総務省の地域力創造アドバイザーにも登録されています。


インタビュアー紹介

太田垣 良

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 GXビジネス推進課

シニアスペシャリスト、GX(グリーントランスフォーメーション)領域における新規ソリューションの企画・推進を担当。


池田 佳樹

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 プロダクトサービス第2課

プロセスシミュレータWITNESSの保守・サポート、受託業務を担当。



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