物流プロセスの効率化:サプライチェーンの燃料消費量とCO2排出量
近年、物流業界では2024年問題やエネルギーの価格高騰など様々な課題に直面し業務の効率化が求められています。また、社会全体ではカーボンニュートラルの実現に向けサプライチェーン全体でCO2排出量の削減が求められています。これらの課題や社会的要求に対し物流プロセス効率化への取組みが非常に重要となっています。
本記事では仮想空間上に表現した物流経路上を運搬したときの燃料消費量やCO2排出量をシミュレーションで予測する取組みについてご紹介します。
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物流2024年問題とは
物流業界の働き方改革にともないドライバーの時間外労働が制限されます。また2024年問題とは別にドライバー不足にも直面し、リソースの減少によりモノが運べなくなる・作れなくなり、そのため物流コストの上昇が懸念されます。
サプライチェーン排出量とは
地球温暖化やカーボンニュートラル実現に向けて企業ではCO2排出量の把握・削減に取り組んでいますが、サプライチェーン排出量は自社のみではなく原料調達・製造・物流・販売・廃棄など一連の事業活動による排出量を指しScope1~3で定義されています。
全体の排出量を把握することで、ホットスポットの特定や効果的な削減策の検討に繋がります。原料や製品などの搬送はScope3、自社のプロセス内の搬送はScope1が該当します。
環境省HPより: 排出量算定について - グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
物流シミュレーションによる燃料消費量、CO2排出量の予測
本記事では、仮想空間上に物流拠点や周辺環境を再現し荷物運搬時の燃料消費量やCO2排出量をシミュレーションします。
運搬スケジュール計画を条件にスケジュールが成立するかどうか、運搬量やスケジュールを変更した場合にどのくらい燃料消費量やCO2排出量が削減できるか分析します。シミュレーションには生産や物流など様々な業務プロセス評価が可能な汎用シミュレータWITNESSを使用しています。
シミュレーションモデル概要
今回のシミュレーションでは工場から3拠点の倉庫へトラックにより製品を運搬します。また走行路上の信号や他車との車間による停止・発進時の影響を考慮しています。
シミュレーションモデルには下記の条件を設定しました。
- 運搬スケジュール
- トラック台数
- トラック種類ごとの燃費
- 走行状態によるCO2排出原単位
シミュレーション結果
運搬スケジュール計画に従い走行した場合のトラックそれぞれの燃料消費量、CO2排出量が評価されます。運搬スケジュールや運搬量を変更した場合など様々な施策検討を事前に行うことが可能であり、さらに独自アルゴリズムを用いた最適化も実施可能です。
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まとめ
以上のようにシミュレーションを用いて仮想空間上で運搬スケジュールや燃料消費量、CO2排出量など様々な指標を同時に評価することが可能となり、これらを最適化することで業務効率の向上や環境負荷低減が期待できます。本事例以外にも拠点内の搬送や工場内のプロセス間の搬送など色々な場面で適用が可能です。
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