
切削加工プロセスにおける被削材変形の検討!シミュレーション事例も併せてご紹介
切削加工は、機械加工の中でも重要なプロセスの一つであり、その精度は製品の品質に直結します。従来、切削加工における工具の選定や切削条件の設定は、熟練の技能者の経験と勘に依存していました。しかし、近年ではCAD(Computer-Aided Design)、CAM(Computer-Aided Manufacturing)、CAE(Computer-Aided Engineering)ソフトウェアの普及により、シミュレーション技術が広く活用されるようになっています。今回は弊社発表論文をもとにご説明いたします。
目次[非表示]
- 1.切削加工におけるシミュレーションの重要性
- 2.有限要素法(FEM)による解析
- 3.Semi-Empirical法による解析
- 4.被削材の変形解析
- 4.1.エンジンブロックの例
- 4.2.L字型被削材の例
- 4.3.加工前の素材応力による被削材の変形
- 5.伊藤忠テクノソリューションズが提供するCAEアドバイザリサービス
- 6.まとめ
- 7.参考文献
切削加工におけるシミュレーションの重要性
切削加工のシミュレーションは、加工精度の向上やコスト削減に寄与します。特に、被削材の変形を予測するシミュレーションは、製品の品質を確保するために非常に重要です。被削材の変形は、加工中の力や熱、応力など多くの要因に影響されるため、正確な予測が難しいとされています。
有限要素法(FEM)による解析
機械加工分野では、有限要素法(FEM)を用いた解析が広く行われています。FEMは、力や熱といった物理現象を考慮した解析手法であり、解析の時間増分を十分小さく取ることで高い解析精度を保つことができます。しかし、解析コストが高いため、効率的な解析手法の開発が求められています。
Semi-Empirical法による解析
CTCでは、FEMによる解析手法に加え、CAD/CAMモデル上の加工にFEM解析結果を適用するSemi-Empirical法を用いた解析にも取り組んでいます。この手法により、加工される材料特性に起因した切削力を考慮する物理シミュレーションが可能となります。
被削材の変形解析
エンジンブロックの例
エンジンブロックの製造工程では、平フライス加工により製品上面を加工することが多いです。ADC10アルミ合金製のエンジンブロックの加工中の切削力による被削材の変形解析を実施した結果を示します。ここでは、工具位置における刃位置を算出し、加工時の力を被削材にマッピングすることで変形解析を実施しました。
L字型被削材の例
ステンレス製のL字型形状の被削材上端を軸切込み0.5mmで6枚刃工具によるフライス加工する際の被削材変形挙動を解析した例を示します。加工点近傍をクランプで拘束している場合とそうでない場合の比較を行い、クランプの有無が被削材の変形挙動に大きく影響することが確認できました。
加工前の素材応力による被削材の変形
切削加工前の素材に加わっている初期応力分布も被削材の変形に影響を与えます。圧延工程を経たアルミ合金製素材の切削加工前後の変形挙動を解析しました。圧延後の応力分布を考慮することで、切削加工後の製品形状の変形を予測することが可能です。
伊藤忠テクノソリューションズが提供するCAEアドバイザリサービス
伊藤忠テクノソリューションズが提供するCAEアドバイザリサービスは、設計や製造プロセスを改善するための高度な解析技術を利用し、製品の品質向上や生産性の向上など、お客様のビジネスパフォーマンスを高めるためのサービスです。
伊藤忠テクノソリューションズのエキスパートたちは豊富な業界知識と経験を活かし、最適な解決策を提供し、お客様のビジネス成長を支援します。
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まとめ
切削加工プロセスにおける被削材の変形は、製品の品質に大きな影響を与える重要な要素です。シミュレーション技術を活用することで、加工中の力や熱、応力を正確に予測し、被削材の変形を最小限に抑えることができます。これにより、製品の品質向上やコスト削減が期待できるため、今後もシミュレーション技術の発展が求められます。
参考文献
本記事は、江渡寿郎、大西慶弘、宮口竹雄、Jared Reckerによる「切削加工プロセスにおける被削材変形に関するシミュレーション手法の検討」を参考にしています。
【参考文献】