シールドトンネル工事とは? BIM/CIMで広げる地下の未来

現在、都市部などの地上のスペースが限られているエリアを中心に、地下空間の有効活用が求められています。

シールドトンネル工事は、地下空間を効率的に掘削してトンネルを構築する方法です。都市の交通網や地下鉄、上下水道などのインフラ整備に欠かせない技術であり、都市の発展と住民の生活の質向上に大きく寄与しています。

この記事では、シールドトンネル工事の概要とその難しさ、未来への展望について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.シールドトンネル工事とは
  2. 2.シールドトンネル工事の難しさ
    1. 2.1.テーパーセグメントの配置と回転量
    2. 2.2.テールクリアランスの確保
  3. 3.国土強靭化計画とシールドトンネル
  4. 4.労働人口減少の影響と未来に向けて
    1. 4.1.BIM/CIM導入による効率化と省人化
    2. 4.2.技術継承と教育
    3. 4.3.安全性の向上
    4. 4.4.情報共有の円滑化
  5. 5.伊藤忠テクノソリューションズが提供するシールドトンネル工事BIM/CIM支援ソリューション
  6. 6.まとめ


シールドトンネル工事とは

シールドトンネル工事は、トンネルで「シールドマシン」と呼ばれる筒状の掘削機を用いて、土圧や地下水圧を安定させながら掘削を行います。

シールドマシンは組立済の「シールドリング」を、シールドマシン内に設置された「シールドジャッキ」で押すことで推進します。シールドマシンを進めてできた空間に、工場製品である5~13個ほどのセグメントをボルドで組立て、1つのシールドリングを作ります。


新たに組立てたシールドリングを押してシールドマシンをさらに推進する…という手順を繰り返すことでトンネルが出来上がります。シールドトンネル工事で出来上がったトンネルは「シールドトンネル」と呼ばれています。

シールドマシンの中は乾いた状態を保っているため、作業員は安全にシールドリングの組立作業を行うことができるのも特徴です。


シールドトンネル工事の難しさ

掘削地盤の状態、シールドマシンの癖、シールドマシンに押されることによって生じる組立済シールドリングの変形などが要因で、シールドマシンはシールドジャッキを押した通りには進みません。そのため、例えるならハンドルを切った通りには進まない、悪路をドリフト走行する車を制御するような高度な技術が必要です。

加えて、後述するテーパーセグメントやテールクリアランスの制限もあり、進行方向を修正することも難易度が高いです。


テーパーセグメントの配置と回転量

シールドマシンは、施工誤差により計画線形からある程度ずれた状態で進行します。一方シールドリングは形が固定された工場製品であり、これだけでは進行方向を修正することができません。

トンネルの線形を補正するには、左右の長さが異なる「テーパーセグメント」と呼ばれるリングを用います。このテーパーセグメントを回転させて組み立てることにより、トンネルの進行方向を上下左右に変化させることができます。

しかし、回転量はセグメントのボルトの位置により制限されます。また、構造的に弱くならないよう、セグメントの継目が揃わないように組み立てる必要もあります。

このように、テーパーセグメントの位置と回転量の決定はまるでパズルのようで、熟練の技術や経験が必要になります。


テールクリアランスの確保

シールドマシンの後端とシールドリングの隙間を「テールクリアランス」と言います。

安全に施工するには、常にテールクリアランスを確保する必要があります。テールクリアランスを確保できず、シールドマシンとシールドリングの干渉が発生すると、シールドリングを破損させてしまう可能性があります。リングが壊れた場合、地下水や土砂がトンネル内に流れ込み非常に危険です。

テールクリアランス確保の条件は、特にカーブが急であるところで厳しくなり、シールドマシンの制御をさらに難しいものとしています。


国土強靭化計画とシールドトンネル


これまで解説してきたシールドトンネル工事は、国土強靭化計画とも強い繋がりがあります。

国土強靭化計画は、自然災害やその他の危機に対する耐性を高めるための国家的な取り組みです。例えば、洪水対策としての地下貯水池や、地震対策としての耐震性の高い地下構造物の建設などが挙げられます。

シールドトンネルは、国土強靭化計画の目標達成に向けて、都市の安全性と持続可能性を高めるための重要な手段となっています。

ところが、日本のインフラは多くが高度経済成長期に建設されたものであり、現在では老朽化が進んでいます。シールドトンネルをはじめとした、多くのインフラが修繕や更新を必要としています。


労働人口減少の影響と未来に向けて

一方で、建設業界は労働人口の減少が深刻な問題となっています。シールドトンネル工事への影響として、工事の進捗が遅れることや品質の低下が懸念されます。

特に、熟練技術者の減少が深刻な問題です。熟練技術者が持つ「暗黙知」が失われることで、施工精度が低下し、予期せぬ問題に対する対応が遅れ、事故のリスクが高まります。

これに対処するためには、技術革新や効率的な施工方法の導入が必要です。以下のような方法で問題を解決していくことが期待されています。


BIM/CIM導入による効率化と省人化

デジタルデータを活用とBIM/CIM導入を実施することで施工の効率化が図れます。例えば、3Dモデルを使用して設計段階での干渉チェックを行い、施工ミスを未然に防ぐことができます。

また、自動化技術も効率化、省人化につながります。導入測量機器や重機の自動制御技術と連携することで、作業員の負担を軽減しつつ施工精度を向上させることができます。


技術継承と教育

BIM/CIMデータをVR(仮想現実)やAR(拡張現実)と組み合わせることで、新人技術者の教育に活用できます。専門知識がない技術者でも空間を共有しながら学習することで、理解を深めることができます。


安全性の向上

BIM/CIMデータを活用して施工前にシミュレーションを行い、リスク要因を特定することで事故防止に役立ちます。

BIM/CIMをIoTセンサーと連携させることもできます。現場の状況をリアルタイムで監視し、異常を検知した場合に即座に対策を講じることができます。


情報共有の円滑化

クラウドベースのBIM/CIM管理システムを導入することで、施工データをリアルタイムで共有し、関係者間のスムーズな連携を実現できます。


伊藤忠テクノソリューションズが提供するシールドトンネル工事BIM/CIM支援ソリューション

伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、建設BIM/CIMソリューションを提供しています。

シールドトンネル工事向けのBIM/CIM支援ソリューションである「C-Shield」は、シールドマシンとセグメントの現在位置、埋設物、重要構造物下のコントロールポイントなどを3Dモデル上で確認できます。これにより、出来形作成と同時に施工情報の整理をワンクリックで行うことができ、作業効率化と品質向上を実現します。線形予測オプションでは、将来のマシン姿勢とリング組立をシミュレーションし、テールクリアランスを計算する機能を用意しています。

また、これにより、現場の作業負担を最小限に抑えながらBIM/CIM活用促進に貢献します。




CTCでは、BIM/CIMソフトウェアの開発・販売だけでなく、それらのカスタマイズ開発や技術サポート、コンサルティングサービスもご提供しています。BIM/CIM導入の課題でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。


まとめ

シールドトンネル工事の未来は、技術革新とともに明るいものです。新しい掘削技術や材料の開発により、より安全で効率的な工事が可能となります。

また、持続可能なインフラ整備のためには、環境に配慮した工法や資源の有効活用が求められます。シールドトンネル工事は、都市の発展と安全性を支える重要な技術であり、未来の都市インフラの基盤として期待されています。


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