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予測AIから「最適な打ち手」を導く ~予測AIと最適化AIを組み合わせる方法~

はじめに

予測 AIは、すでに多くの現場で「未来を見積もる」ための道具として使われています。たとえば、「広告費を増やしたら売上はどう変わるのか」「価格を変えたら需要はどの程度動くのか」といった問いに対して、予測モデルは予測値を返します。

一方で、実務で本当に知りたいのは「予測結果」そのものではなく、「では、どの意思決定を選べばよいのか」です。ここに、予測 AIだけでは埋めにくいギャップがあります。

目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.予測AIの活用課題
    1. 2.1.試行錯誤
    2. 2.2.判断の不確かさ
  3. 3.予測結果から最適な入力を求める
  4. 4.予測AI×最適化AIの原理
    1. 4.1.予測AIの原理
    2. 4.2.最適化AIの原理
    3. 4.3.予測AIと最適化AIの組み合わせ
  5. 5.予測AI×最適化AIの適用例
  6. 6.まとめ
  7. 7.伊藤忠テクノソリューションズのAI最適化の取組み

予測AIの活用課題

予測 AIを意思決定に使おうとすると、現場では大きく 2つの壁にぶつかります。ひとつは「試行錯誤が前提になりやすい」こと、もうひとつは「その判断が本当に最適なのか分かりにくい」ことです。

試行錯誤

予測モデルは、基本的には「入力を与えると出力を返す」順方向の仕組みです。そのため、最適な入力を探すには、候補を入れては結果を見て、また候補を変えるという試行錯誤になりがちです。

価格設定 売上予測 利益計算 うまくいかなければ、価格設定からやり直し。

判断の不確かさ

いくつかの候補の中で良さそうな案を選べたとしても、それが本当に最適解なのかを定量的に説明するのは簡単ではありません。特に、価格・在庫・配送能力など複数の制約条件が絡む業務では、この不確かさが意思決定のボトルネックになります。

もっと良い価格設定があったのでは?

こうした状況では、「予測結果から逆算して、最適な入力を提示してくれるモデルがあればよいのに」と考えるのは自然です。しかし、この逆算モデルを別途作るアプローチには、いくつかの現実的な難しさがあります。

予測結果から最適な入力を求める

本項では、「望ましい結果から、その結果を生む入力を推定するモデル」を逆算モデルと呼びます。考え方としては魅力的ですが、実装・運用の観点では負担が大きくなります。

  • 順方向モデルとは別に、逆方向のモデルを学習する必要があります。つまり、学習データの設計、学習、検証、運用監視がほぼ二重に必要になります。モデル更新頻度が高い業務では、迅速な改善サイクルの足かせにもなります。

  • GPUを含むインフラコストの負担も増えます。近年は GPUリソースの需要が高く、学習回数やモデル数が増えるほど、コスト面の影響は無視しにくくなります。

  • そもそも逆問題は一意に解けない場合があります。同じ売上を達成する価格や販促条件が複数存在することもあるため、逆モデルで安定した推定が難しいといったリスクもあります。

予測AI×最適化AIの原理

ここで発想を変えます。逆算用の新しい AIモデルを作るのではなく、既存の予測モデルを「数式」として扱い、その上で最適化計算を行います。つまり、予測 AIが持っている入出力関係を制約や目的関数に組み込み、「目的関数をもっともよくする実行可能な入力」を計算で求めるアプローチです。

予測AIの原理

深層学習を例にすると、予測モデルは入力層、中間層、出力層から構成されます。中間層は複数重なることが多く、入力された情報を段階的に変換しながら最終的な予測値を出力します(図 1)。

入力層のデータ(x11~x13:「説明変数」とも呼ばれる)に対して、計算を繰り返し、予測対象となる値(y1~y3:「目的変数」とも呼ばれる)を計算します。

例えば、xは販売価格、地域、時期など、yは販売個数の予測値などを表します。

1深層学習モデルのイメージ図

中間層では、重み付き和と活性化関数によって値を変換します(図 2)。

このとき、重みwや切片bをデータから決める行為が「学習」と呼ばれます。

2深層学習モデルの中間層のイメージ図

最適化AIの原理

最適化 AIでは、業務課題を「決定変数」「制約条件」「目的関数」という 3つの要素に分解し、計算可能な形に定式化します。これは、ビジネス上の意思決定を数学的に扱える形へ落とし込む作業です。

  • 決定変数
    最適化によって求めたい値です。たとえば、価格、出荷量、在庫配分、広告予算などが該当します。

  • 制約条件
    必ず守るべきルールです。たとえば、在庫上限、予算上限、配送能力、価格の上下限などを数式で表します。

  • 目的関数
    最大化または最小化したい指標です。利益を最大化する、コストを最小化する、需要充足率を最大化する、といった形で定義します。

予測AIと最適化AIの組み合わせ

予測AIと最適化AIを組み合わせるポイントは、予測モデルをブラックボックスのまま試行錯誤に使うのではなく、最適化問題の一部として扱うことです。予測AIの説明変数のうち、価格、出荷量、広告予算など意思決定者が変更できる変数を、最適化の決定変数として扱います。地域、時期、天候など変更できない変数は、所与の条件として固定します。また、予測AIの目的変数を目的関数や制約条件に組み込みます。

深層学習モデルを最適化AIの数式として表現すると、以下のようになります。

  • 決定変数
    入力層の変数 x 1 p に加えて、各中間層の変数 x nm 、および各層で活性化関数を適用する前の値 anm、出力層の変数 ymを決定変数として扱います。ただし、最適化によって業務上求めたいのは、価格や出荷量などに対応する入力層の変数です。中間層・出力層の変数は、予測モデルの計算過程を数理最適化モデル内で表現するために導入します。

  • 制約条件
    各層の値は、予測モデルで学習済みの重み wnmpと切片 bnmを用いて、次のように表します。

     


    また、最終層 L の出力を予測値 xLmとして扱います。

  • 目的関数
    目的関数では、予測モデルから得られる出力値を用いて、最適化によって最大化または最小化したい指標を定義します。目的関数の数式は、利益を最大化したいのか、コストを最小化したいのか、需要充足率を高めたいのかといった、実現したい内容によって変わります。ここでは例として、最終層から得られる複数の予測値を合計し、その合計値が最大となるような入力層の値を求めます。



    注意:利益最大化と在庫削減など複数の目的がある場合、一般にはひとつの解がすべての目的で最良になるとは限りません。そのため、重み付けによってひとつの指標にまとめる、目的に優先順位を設ける、またはパレート最適解を提示して意思決定者に選択してもらう、といった方法を用います。

予測AI×最適化AIの適用例

具体例として、米国のアボカドサプライヤーにおける価格最適化の事例を見てみます。

出典: https://www.gurobi.com/resources/demos/avocado-price-optimization

このサプライヤーは、需要予測 AIにより、地域ごとに価格と需要の関係を見積もれる状態にありました。つまり、価格と需要の関係はある程度見えていたわけです。

しかし、実際の業務判断では「どの地域に、いくらで、何個出荷するか」まで決める必要があります。ここには、価格、需要、輸送費、供給量といった複数の要素が絡みます。

戦略としては、以下の 3つの戦略が考えられましたが、どの戦略ももっともらしいため、判断に迷っていました。

  • 戦略1:輸送費が安い地域へ
    コストを抑えて利幅を得る戦略。

  • 戦略2:高く売れる地域へ
    単価を上げる戦略。

  • 戦略3:多く売れる地域へ
    数量で利益を積み上げる戦略。

最適化AIを導入することで、需要予測の結果を使いながら、地域ごとの価格と輸送量を同時に決め、全体として利益を最大化する意思決定につなげました。これは、「予測後に人が判断に迷う」のではなく、「予測モデルを使って最適な打ち手まで計算する」例と言えます。

まとめ

予測AIは、未来を見積もるための強力な道具です。しかし、予測AIだけでは「どの打ち手を選ぶべきか」という意思決定を直接提示するものではありません。

一方で、逆算モデルを別途作る方法は、学習コスト、運用コスト、精度面の不確実性が大きく、必ずしも現実的とは限りません。

そこで有効になるのが、予測AIと最適化AIの組み合わせです。予測モデルを数式として扱い、制約条件と目的関数の中に組み込むことで、「予測」から「最適な意思決定」へと進むことができます。

もし現場で「試行錯誤が多い」「本当に最適か分からない」「逆算モデルを作るのが難しい」と感じているなら、取り組むべきなのは、予測モデルを追加することではなく、最適化問題として定式化することかもしれません。

伊藤忠テクノソリューションズのAI最適化の取組み

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、課題の整理から数理モデルの設計、システム開発、保守、業務定着まで一貫してサポートしています。

Excelや担当者の経験・勘では限界を感じている場合は、最適化AIの導入を検討する価値があります。日々の業務に「毎回悩む判断」「担当者によって結果が変わる判断」「条件が多く調整に時間がかかる判断」があれば、ぜひご相談ください。

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