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カーボンニュートラルの主役はガス~CO2を捕まえる編~

世界が混乱し、天然ガスの供給が絞られると、眠りかけていた化石燃料や原子力も復活の兆しが出てきました。

天然ガスは化石燃料に属する資源なので将来的にはゼロを目指しますが、先進国の重要なインフラのひとつである事、燃焼時に大気汚染や地球温暖化などの原因となる窒素酸化物や二酸化炭素などの排出が少ないエネルギーである事から、当面は最先端技術を用いて他のガスとの混焼や合成ガスの生成で転換・共存を図ってゆくようです。

ここでは、天然ガスに限らず少し寄り道をしながら、皆さんとガスの接点やCTCの取り組みを交えて話してゆきたいと思います。


目次[非表示]

  1. 1.カーボンニュートラルの主役はガス~CO2を捕まえる編~
    1. 1.1.CO2を回収・貯留する
    2. 1.2.CO2を燃料として利用する
  2. 2.CO2の活用に向けて
    1. 2.1.ゼオライトへのCO2吸着シミュレーション
    2. 2.2.マテリアルズ・インフォマティクスの利用
  3. 3.伊藤忠テクノソリューションズのマテリアルズ・インフォマティクス・サービス
  4. 4.まとめ


カーボンニュートラルの主役はガス~CO2を捕まえる編~

温暖化ガスの大半を占めるCO2を捕まえてカーボン・リサイクルする試みが体系化・具体化してきました。最初にCO2の回収・貯留方法から紹介してゆきたいと思います。

カーボンニュートラルに関しましては下記をご参照ください。

  カーボンニュートラルとは? 取組む理由や実現に向けた活動を解説 2020年10月に政府が宣言したことでカーボンニュートラルを知った方もいるのではないでしょうか。カーボンニュートラルは、国だけでなく、企業も取組むとよい施策です。企業が取組むことで、コスト削減や収益化などのメリットがあると考えられています。 しかし、カーボンニュートラルに取組むにあたって、「カーボンニュートラルの基礎から理解したい」「カーボンニュートラルで課題解決につながるサービスがあれば利用したい」と考える担当者の方もいるのではないでしょうか。 本記事では、カーボンニュートラルの概要や、取組んだほうがよい理由と実現に向けた活動の内容を解説します。 Trans Simulation


CO2を回収・貯留する

「カーボンニュートラル:Carbon Dioxide Neutral」とは、温室効果ガス(主にCO2 )の排出量と吸収量を均衡させることを意味します。

水素燃料や電気自動車など高度な技術を用いて直接的・間接的にCO2を削減してゆく方法もありますが、直接CO2を捕まえてカーボンニュートラルに貢献する方法もあります。これが「CCS:Carbon dioxide Capture and Storage」と言われるもので「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれています。

大規模プラントや発電所、工場などから排出されたCO2を回収し地中深くに貯留・圧入するというものです。

よく似たプロセスで「CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」があります。分離・貯留するまではCCSと同じですが、CO2をうまく利用しようというものです。

例としては採掘中の油田にCO2を注入し、残った原油を効率よく取り込む仕組みで、原油増進回収(EOR:Enhanced Oil Recovery)と呼ばれています。いずれも最終的にCO2を貯留する事が出来るので効果的な方法として用いられています。



CO2を燃料として利用する

 回収したCO2を利用するカーボンリサイクルも種々の方法が検討されています。前出のCCSやCCUSなどは、海外の大規模プラントを対象としていることが多いのですが、国内の工場やプラントにおいてもCO2の発生するプロセスを突き止め、回収したCO2をアミンという液体に溶かして貯留したり、大気中のCO2を直接回収する方法(DAC:Direct Air Capture)の研究開発(試行運転も含む)が進められています。


出典:資源エネルギー庁 2019-09-20: CO2回収後の利用方法

回収したCO2を「2.燃料」として化学的に別のガスや液体に変えて燃料として利用する方法があります(昨今話題のe-Fuelも広義の意味で含まれます)。本章ではメタネーションという技術に注目しています。

CO2とH2 (水素)を反応させ天然ガスの主成分であるメタンを合成する仕組みです。化石燃料である天然ガスの使用量を削減し、新たなCO2の生成を抑制しつつも、既存設備の有効活用が期待できる技術として注目されています。

経済産業省が2021年6月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても「次世代熱エネルギー産業」に位置づけられる重要な分野となっています。


CO2の活用に向けて

メタネーションは歴史のある技術で、日本で合成メタンが生成されたのは1955年と記されています※1)。ガスのカーボンニュートラル対策としては、すでに試験プラントでは成果が出ており、大量生成に向けた動きが始まっています。進め方としては「炭酸ガスの回収」、「CO2の吸着・分離」 、「メタネーション」と3つのステップに分けることが出来るのですが、それぞれのステップには推進する各企業の環境や特色があり一意に決めることは出来ません。

ここでは一般的なプロセスを例に進めたいと思います。

※1)国立研究開発法人国立環境研究所「グローバル二酸化炭素リサイクル」橋本功二著


ゼオライトへのCO2吸着シミュレーション

CO2を取り出す手法は、①吸収・吸着法、②分離膜法、③深冷分離法などがあり、さらにそれぞれが細かく分類されてゆくのですが、ここでは①に属するゼオライトを用いた物理吸着法を紹介します。ゼオライトには、吸着特性やイオン交換特性など優れたものが多数存在し、使用目的によって数ある結晶構造から適切な材料が選択されてきました。

現在ではさらに吸着性能を上げる新しい結晶構造の研究開発が進められています。



分子動力学法を用いてゼオライト中へのCO2分子吸着量を予測(詳細はYoutubeにて公開中)、実測値との比較例

出典:2022年10月18日開催 伊藤忠テクノソリューションズ・Webセミナー 分子動力学法を用いてゼオライト中へのCO2分子吸着量を予測(詳細はYoutubeにて公開中)、実測値との比較例


マテリアルズ・インフォマティクスの利用

メタネーションで、合成メタンを効率よく生成するためには、 CO2をより多く回収する為の吸着材の開発や、メタンの生成効率を向上させる触媒の設計が重要です。

CTCでは、マテリアルズ・インフォマティクスを活用して吸着材や触媒について、機能的な材料組成の探索を支援しています。マテリアルズ・インフォマティクスを利用する事により、CO2の吸着性や合成メタンの生成量を最大化するために、予測技術を用いて圧力、熱、電場などの最適な外部条件を割り出し、高効率なCO2の回収と天然ガス使用量の削減につながるカーボンリサイクルの仕組みを実現します。




伊藤忠テクノソリューションズのマテリアルズ・インフォマティクス・サービス

CTCでは、新規材料開発を行う上で、短時間・低コストで行いたい、AIやシミュレーション技術などを活用したい、乱雑になった実験データを整頓したいなど様々な要望に合ったシステムを提供しています。

弊社のMI&DXシステムは、様々なアプリケーションが連携した仕組みになっているため、お客様それぞれに合ったシステム提供が可能です。


まとめ

カーボンニュートラルにおいて、CO2の吸着に関する一部をご紹介しました。メタネーションの合成反応や探索・最適化に関しては、引き続き別章にて紹介させて頂きます。

コンピュータサイエンスに強い皆さんでも、姿・形がなく、圧力の増減で体積まで変化する「ガス」は馴染みの少ない(つかみどころの無い)物質であると思います。カーボンニュートラルにおいて関連するガスは非常に多く、温室効果ガス全般、水素ガス(H2)、天然ガス・都市ガスの主成分であるメタンガス(CH4)、アンモニアガス(NH3)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)など、元素記号「1:H」「6:C」「7:N」「8:O」が複雑に組み合わさって登場します。

誤解を恐れずに申し上げると、この1・6・7・8が、触媒によって性質を変えながら登場を繰り返すのです。今後、メタ―ネーションを含めガスを軸としたテーマを掲載させて頂きますのでご期待下さい。


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