マテリアルリサイクル(材料リサイクル)とは? メリットや課題を解説
現在、世界的に脱炭素社会を目指すカーボンニュートラルへの取り組みが進められています。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つに、廃棄・回収された製品を新たな製品原料へと再利用する“マテリアルリサイクル”があります。
マテリアルリサイクルは、温室効果ガスの削減や循環型社会の実現につながるリサイクル方法として取り入れられていますが、品質やコストなどの面で課題があります。
この記事では、マテリアルリサイクルとはどのようなものか、概要やメリット、課題について紹介します。
なお、カーボンニュートラルについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:環境省『カーボンニュートラルとは-脱炭素ポータル』
目次[非表示]
- 1.マテリアルリサイクルとは
- 2.マテリアルリサイクルのメリット
- 2.1.①CO2排出量を削減できる
- 2.2.②天然資源の消費を抑制できる
- 3.マテリアルリサイクルの課題
- 3.1.①品質劣化のリスクがある
- 3.2.②コストがかかる
- 3.3.③カーボンフットプリントが難しい
- 4.CTCはリサイクル・サプライチェーンを提案
- 5.まとめ
マテリアルリサイクルとは
マテリアルリサイクルとは、製品に用いられる材料や資源をリサイクルして再利用することです。材料リサイクルや再資源化、再利用とも呼ばれます。
現在行われている代表的なリサイクル方法には、ゴミ焼却の際に発生する熱をエネルギーとして利用する“サーマルリサイクル”と、元の原料に戻す“ケミカルリサイクル”があります。それぞれには以下の違いがあります。
▼リサイクル方法の違い(プラスチックの場合)
画像引用元:経済産業省 資源エネルギー庁『カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)』
材料を再利用するマテリアルリサイクルには、主に2つの方法があります。
▼マテリアルリサイクルの方法
方法 |
仕組み |
レベルマテリアルリサイクル |
リサイクル前の製品と同一のものにリサイクルする |
ダウンマテリアルリサイクル |
リサイクル前の製品から品質を下げたものにリサイクルする |
また、リサイクルする材料としては、主にプラスチックやガラス、金属クズ、木材などが挙げられます。
▼マテリアルリサイクルの例
- 金属クズを溶かして金属として再利用する
- ペットボトルをTシャツにする
- 廃木材を紙にする
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)』
マテリアルリサイクルのメリット
マテリアルリサイクルは、カーボンニュートラルに貢献する取り組みとして重要視されています。
①CO2排出量を削減できる
1つ目のメリットは、CO2排出量が削減できることです。
カーボンニュートラルの実現にはCO2排出量の削減が必要です。しかし、国内でのCO2排出量の29.3%は産業部門・工業プロセスが占めており、そのうちの18.6%が科学分野から排出されています。
マテリアルリサイクルを行うと、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの大部分を占めるCO2排出量を削減することが可能です。
廃プラスチックを有効活用することによって、資源・エネルギーの代替によって本来排出されていたCO2排出量を抑えられます。
出典:環境省『マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて』/経済産業省 資源エネルギー庁『カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)』
②天然資源の消費を抑制できる
2つ目のメリットは、天然資源の消費を抑制できることです。
一から製品を製造するのと比較して、リサイクル時には使用する天然資源エネルギーを直接的に削減できます。
限りある資源を国内で循環できるようになると、環境への負荷を低減できることはもちろん、製造原価の削減や製品の安定的な供給にもつながります。
出典:環境省『マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて』
マテリアルリサイクルの課題
マテリアルリサイクルは、環境保護や循環型社会の実現につながる取り組みですが、製造上の課題が多く、いまだ十分な活用が進んでいない現状があります。主な課題には、以下の3つが挙げられます。
①品質劣化のリスクがある
リサイクルする製品に少量でも異物が入っていると品質の劣化につながるため、徹底した異物除去作業が欠かせません。
品質が低下した製品を繰り返しリサイクルするとさらなる劣化を招くため、リサイクルできる回数に限りがあることも課題の一つです。
②コストがかかる
マテリアルリサイクルでは、異物除去作業を行うにあたって人件費や時間的なコストが発生します。品質劣化を抑えるためには、技術的な工夫も必要です。
このようなことから、場合によっては一から製造された製品よりもリサイクル製品のほうが販売価格が高くなる可能性があります。
③カーボンフットプリントが難しい
カーボンフットプリント(以下、CFP)とは、製品のライフサイクル(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)を通して排出された温室効果ガスを、CO2量に換算して表示することです。
▼缶飲料におけるCFP貼付の例
画像引用元:環境省『カーボンフットプリント』
CFPによってCO2排出量を見える化することで、製品のライフサイクルのなかで削減効果の高い要素を把握できるようになります。これにより、サプライチェーン全体で削減対策を講じられます。
ただし、CFPに取り組むには、製品のライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)を活用して、各段階での環境負荷を算定する必要があります。マテリアルリサイクル製品の場合、個別のCFPを算出することが困難になるため、商品へのCFP表示が難しいという課題があります。
出典:環境省『カーボンフットプリント』『カーボンフットプリント ガイドライン』
CTCはリサイクル・サプライチェーンを提案
従来から、企業内工場では使用された材料のリサイクルが行われてきました。しかし、強度や耐性においては元の材料に戻ることはありません。そのため、実際にはリサイクル前と同様・同等の商品ではなく、簡易な商品に変換されていました。
そうした背景のもと、CTCでは高額な金属を元の性能に再生し、新材料を生成するよりも安価に、カーボンニュートラルを実現するリサイクル・サプライチェーンを提案しています。
具体的には、QuesTekの熱処理・材料特性を関連づけてモデル化するシステムデザインチャートを利用して、「成分」「組織」「特性」計測からシミュレーションで達成したい材料設計を行います。スクラップ材を使用した場合の材料特性予測や最適化、不純物が材料に与える影響を評価することも可能です。
▼ICME材料設計を用いたリサイクル・サプライチェーン構想
ICME材料設計はQuesTekで確立された技術なので、サプライチェーンに至るリサイクルポイントや難易度の高いCFPの追跡をお客様と共に考えてゆきたいと思います。
伊藤忠テクノソリューションズが提供する材料開発・設計ソリューションに関しましては下記をご参照ください。
まとめ
この記事では、マテリアルリサイクルについて以下の内容を解説しました。
- マテリアルリサイクルの概要
- マテリアルリサイクルのメリット
- マテリアルリサイクルの課題
マテリアルリサイクルは、CO2削減や天然資源の消費抑制など、環境負荷の低減と循環型社会の実現に向けた取り組みの一環として効果が期待されています。
一方で、マテリアルリサイクルを行うには、徹底した異物の除去作業が必要になるほか、品質劣化のリスクがある、コストがかかるといった課題もあります。
伊藤忠テクノソリューションズでは、材料設計やプロセスの最適化を行う計算材料設計技術(ICME)の先駆者となる米QuesTek社との合併事業を開始しています。
新材料を開発するよりも安価にカーボンニュートラルを実現するリサイクル・サプライチェーンのコンサルティングを行っており、マテリアルリサイクルの実現を後押しします。
サービスについては、こちらをご覧ください。
ICME技術を用いた材料リサイクルのセミナーはこちらをご覧ください。
なお、材料開発におけるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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