離散事象型シミュレーションとは?詳細と活用シーンをご紹介
近年、生産・物流領域での効率化や施策検討のためにシミュレーションが活発に活用されています。
特に離散事象型シミュレーションは、意思決定の根拠となる生産量や生産能力などの指標を定量評価するために有効です。
本記事では離散事象型シミュレーションの特徴と活用シーンについてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.シミュレーションの種類
- 1.1.離散変化モデル
- 1.2.連続変化近似モデル
- 1.3.離散事象型シミュレーションの特徴
- 2.伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス
- 3.参考文献
シミュレーションの種類
計算機で行うシミュレーションにはいくつか種類があり、シミュレーションクロックの扱いを基に連続プロセス型シミュレーションと離散事象型のシミュレーションに大別されます。
連続プロセス型シミュレーション(連続型シミュレーション)では、時刻0からTまでの時間を微小時間Δtで分割し、 Δtごとの状態を微分方程式や差分方程式などで計算してモデル化対象の振る舞いを再現します。
この場合、シミュレーションクロックはΔtの等間隔になります。気象のシミュレーションや衝突解析などは連続型シミュレーションとなります。
離散事象型シミュレーション(離散型シミュレーション)では、時刻0からTまでの時間をイベントで分割し、イベント時刻における状態を線形式で計算してモデル化対象の振る舞いを再現します。事象発生時刻から次の事象発生時刻へという「事象 ・事象時間進行」になるので、一般にシミュレーションクロックは等間隔刻みにはなりません。
シミュレーション対象となることが多いのは、人やモノの流れを模倣するなど離散的な出来事です。このとき、ひとつひとつの事象(イベント)は独立してとらえられ、その事象の連なりによって離散系モデルは組み立てられています。このことから、離散事象型シミュレーションは、イベントシミュレーションとも呼ばれます。
離散変化モデル
離散事象型のシミュレーションでモデリングできるモデルには、離散変化モデルと連続変化近似モデルがあります。
離散変化モデルとは、事象を分解しても合成しても数えられ、それらの状態もひとつひとつを切り離して扱えるモデルです。例えば、食堂では「客が到着する」、「入店する」、「空きがなければ待つ」、「着席する」、「注文する」、「食べる」、「レジが混みあっていれば待つ」、「店を出る」などの事象が発生します。
これらの事象をひとつひとつ切り離して捉えたとき、離散系の事象と言います。
離散系の事象は取り扱う対象を1つ、2つ、と数え上げることが可能です。
例えば、来客数5名、~~座席数20席、従業員3名、ランチの注文4食などである。また、ランチの注文4食は、ライス4杯、スープ4杯、おかず4つというように、分解して数え上げることも可能です。
連続変化近似モデル
連続変化近似モデルとは、流体のような連続体を、離散体として近似化したモデルであり、連続体モデルとも呼ばれます。
流体や化学変化の過渡状態などは離散体として扱いにくいため、微分方程式によるモデリングを行い、連続プロセス型シミュレーションを適用することが一般的です。
しかし、離散体と連続体を組み合せてシミュレーションを行うとき、連続変化近似モデルが適用される場合があります。
例えば、流体(連続体)の原材料を投入し、缶(離散体)に注入して製品とする製造ラインで、ある単位(1Lなど)で連続体を離散体に近似してモデル化を行います。
離散事象型シミュレーションの特徴
離散事象型シミュレーションは、任意の環境や設備において、人や事物の流れがどのように変化するか検討できる点に特徴があります。
特に、確率要素を含む多重の待ち行列問題に帰着する事例に適した方法です。
金融機関窓口のシミュレーション
例えば、金融機関の店舗サービスを考えたとき、予想される来客数に対応して、充分なサービスを不満の生じない短時間で提供できるかについて、時々刻々と変化する店舗内での来客の流れや待ち行列などを再現することで検討できます。
一般に単純な待ち行列は、平均サービス待ち時間などのシステムの特性を表す事項が公式化されており、計算が可能です。しかし、来客の到着や提供するサービスの特性が不規則なものであったり、確率要素を含む場合、さらには複数の待ち行列系が錬成して構成されているシステムは理論的計算は困難です。
離散系シミュレーションでは、実際の金融機関の店舗サービスを改善するために、仮想空間上で窓口、ATM、待合席の数や配置を指定し、時間の流れに沿って表現できます。
変化できるリソースの数量や配置を変化させて複数回シミュレーションすることで、店舗サービスを評価する指標(平均待ち時間、最大待ち時間など)が改善されるよう、対象システムの設計を行うことが可能です。
伊藤忠テクノソリューションズのIntelligentTwinサービス
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参考文献
『シミュレーション解析入門』三恵社 石川友保