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サプライチェーンデータ連携基盤を活用したカーボンフットプリント(CFP)算定から分析まで

カーボンフットプリントという言葉はご存じでしょうか?まだ、日常生活の中では聞き慣れない言葉かもしれませんが、消費者が脱炭素・低炭素な商品を選ぶための指標となり、ネットゼロを達成するために必要となるものです。

日本国内では、10年程前から、CFPラベルやエコリーフマークといったCFPラベルの活用が進められています。国内では、欧州に輸出している製造業から取り組みが開始されています。

いずれ、消費者の行動変容により、様々な製品へのCFP添付が求められるようになっていくかもしれません。

本ブログでは、製品単位のCFP可視化とその管理・分析に貢献するIBM Supply Chain Intelligence Suite(以下SCIS)を活用したCTCのGXソリューションを紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.CFP開示要求への対応:現状と課題
  2. 2.サプライチェーンデータマネジメントを実現するSCIS
  3. 3.CFPを算定する上での課題とその解決方法
    1. 3.1.課題
    2. 3.2.解決方法
  4. 4.企業のGXを支援する伊藤忠テクノソリューションズのサービス
  5. 5.まとめ


CFP開示要求への対応:現状と課題

CFPの開示が要求される例として、欧州連合(EU)によるバッテリー規制が挙げられます。この規制では、バッテリー製品の原材料調達から設計・生産プロセス、廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体にわたる、CFP申告義務やリサイクルされた原材料の最低使用割合などが規定されます。

これらは、社会全体のGHG排出量削減に対して、一企業の努力では取りうる施策に限界があることに起因しています。国内においても環境省と経済産業省のカーボンフットプリントガイドライン(*1)によると、従来の環境意識の高い消費者への環境ラベルとしての使い方に加え、近年はサプライチェーン全体のGHG排出量把握とその削減効果の評価にCFPを利用する例が増えてきています。

他社製品と比較しない前提においては、ISO 14067:20182(2)や GHG Protocol Product Standard(3)を参照する場合が多いですが、カットオフの基準やバウンダリーの定義等には様々な解釈の余地があり、企業は独自の方法で算定する必要があります。

サプライヤー同士でCFPの比較ができない点や提出されたデータがその企業独自の実績データに基づく算定(1次データ)となっていない場合、自社の削減努力がCFPに反映されず、結果としてサプライチェーン全体でのGHG削減へつながらない点が課題となります。

また、近年のサプライチェーン・バリューチェーンの複雑化に伴い、製品のトレーサビリティや、製品のライフサイクル全体(原材料採掘~生産~利用~廃棄リサイクル)にわたる社会・経済問題を解決するためには、例えば食品のトレーサビリティにおいて生産地偽造・改ざんを防ぐ目的に対してブロックチェーン技術を活用することで流通量を担保するなど、ITを活用することが重要となります。

複雑化するサプライチェーン・バリューチェーン

出典:経済産業省 第12回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2023.3.1

*1 カーボンフットプリント ガイドライン 20230331_3_1.pdf (meti.go.jp)

*2  ISO 14067:2018 温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針

*3  Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard


これらの課題を解決するためには、自社の努力だけではなく、取引先企業とのデータ連携・管理とCFP算定、分析に必要な情報の共有が重要となります。これを解決するのがブロックチェーン技術を活用してCFPを管理・証明することが可能なSCISなのです。


サプライチェーンデータマネジメントを実現するSCIS

SCISは複雑化したサプライチェーンにおけるデータ連携とトレーサビリティの実施に課題を持つ企業向けに設計されたソリューションです。

SCISは、サプライチェーンのトレーサビリティを実現するために必要な共通機能を提供し、ユーザー独自のサプライチェーン・プラットフォーム環境を構築することで、サプライチェーンにおける信頼性の高いデータのトレーサビリティとデジタル変革の推進を支援いたします。


IBM Supply Chain Intelligence Suite (SCIS) 概要図

出典:IBM SCIS資料より抜粋


CFPを算定する上での課題とその解決方法

CFPを算定する上での課題とその解決方法についてご紹介します。

課題

CFP算定において、購入した金額・数量によるGHG排出量の算定(按分方式)のみでは、製品単位でのカーボンホットスポットを見抜くことができず、削減ポテンシャルのある原材料、プロセスを特定できないという課題があります。

また、サプライヤー側からは製造プロセスのすべてを下流の企業に渡してしまうと、その部品原価や製造にかかわる秘密情報も漏れてしまうといった問題もあります。その両方が、SCISを活用したCTCのGXソリューションにより解決します。


解決方法

上記の問題解決手段の一つとしてSCISを活用したCFP算定~分析の方法を以下の図に従い、ステップごとにご紹介します。


SCISを活用したCFPデータの分析イメージ


  1. 各原材料CFPは企業ごとに自社工場から算定された1次データを基に各原材料別に算定します。
  2. 算定されたGHG排出量はCFP認定を受け、SCISを介して集約、部品組み立て工場において輸送、製造プロセスによるGHG排出量が加算され各部品単位のCFPとなります。それを繰り返すことによって、各企業では自社より1つ上流工程の企業で算定されたCFPのみが参照できる状態となり、それより上流工程の情報は秘匿されたまま運用することが可能となります。
  3. 最終的に集まったデータをBIツールなどで可視化・分析することにより、一つの製品におけるGHG排出量のホットスポット分析が可能となります。

 
SCISのCFPデータ登録方式はPACT(*4)に基づいており、1次データ比率の入力も必須となっておりますので、1次データ比率の低い(≒2次データ比率の高い)部品、工程を特定し、削減努力の対象とすることが可能です。

サプライチェーン下流側からは直接の仕入先に対しGHG排出量の削減余地がないか、施策を協議・提案し、より競争力のある製品を作り出すことも可能となります。


企業のGXを支援する伊藤忠テクノソリューションズのサービス

伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、GXに貢献するためにカーボンニュートラルに関するサービスを体系化しました。

体系化したサービスは、温室効果ガスの削減につながる“GXソリューションフレーム”とデータを一元管理する“GXデータプラットフォーム”で構成されています。

▼CTCのGXサービスの体系

CTCのGXサービスの体系

GXソリューションフレームは、“GXソリューション”と“GXアドバイザリサービス”の2つに分けられます。GXソリューションとGXアドバイザリサービスは、いずれも温室効果ガスを削減するための各種ソリューションをまとめたものです。

GXソリューションは、企業の温室効果ガス排出量の削減やエネルギー利用の効率化などの技術支援を実施します。対してGXアドバイザリサービスは、情報開示やGX戦略策定支援、環境価値取引など顧客の環境経営を支援します。

一方、GXデータプラットフォームとは、温室効果ガスの削減に向けて取組む各企業における部門間の連携を促すための活用基盤を構築するものです。
CTCでは、これらのソリューションを活用して、GXに取組む企業とカーボンニュートラルの実現に貢献しています。


まとめ

CTCのGX支援サービスは、企業が自社製品のGHG排出量を正確に可視化し、サプライチェーン全体の脱炭素化への道を確固たるものにするため強力にサポートいたします。

今回のSCISを使ったデモをご説明することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


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