水素サプライチェーンとは?脱炭素を加速する水素サプライチェーンを解説
脱炭素を推進するために、水素サプライチェーンの重要性が注目されています。
水素サプライチェーンとは、水素の製造、輸送、利用を一貫して支える仕組みのことです。水素を利活用することにより、車や航空機などの移動手段や発電などのエネルギー需要の脱炭素化を促進することが期待されています。
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水素とは?
まず、水素とはどのようなものか確認しましょう。水素(H2)は無色無臭で、常温では空気より軽い気体として存在します。燃焼時には、酸素(O2)と反応して水(H2O)を生成し、このときエネルギーを放出します。水素の爆発濃度は4 %~ 75 %と非常に燃焼と爆発し易く、取り扱いに注意が必要です。
更に、水素のエネルギー密度は他に比べて低いため、効率的に利活用するためには、液化したり高圧で圧縮する必要があります。水素の融点は-259℃(沸点が-253℃)なので液化するにはかなりの低温が必要ですが、体積は約1/800まで小さくなり軽いため、低温貯蔵に向いています。
次の章から、主に水素の製造方法と輸送方法について説明します。
水素の製造方法
なぜ水素が重要なのかですが、水素は非常にクリーンなエネルギー源であり、燃焼時には水しか生成しません。また、電気と比べて長期貯蔵が可能です。
ただし、その製造過程など利活用までの過程では二酸化炭素を排出することになります。まずは、色で表現される水素の様々な製造方法を見てみましょう。
グリーン水素
再生可能エネルギーを使用して水を電気分解することによって生成される水素のことを指します。
通常、再生可能エネルギー源としては太陽光や風力などが利用されるため、副産物として二酸化炭素の排出がありません。しかし、供給が不安定であったり、現時点では高コストである欠点があります。
ブルー水素
化石燃料を原料とし、天然ガスや石炭を蒸気メタン改質や自動熱分解して、水素と二酸化炭素に分解します。
排出される二酸化炭素は、CCS(二酸化炭素回収・貯留)で地中深くに圧入することにより、二酸化炭素の発生を抑えることができます。ブルー水素の需要は今後世界規模で高まると予想されています。
グレー水素
ブルー水素と同様に、化石燃料を原料とし、天然ガスや石炭を蒸気メタン改質や自動熱分解して、水素と二酸化炭素に分解します。
そのため、二酸化炭素が排出されます。問題点としては、二酸化炭素はそのまま排出されるため、環境への負荷が大きくなります。石炭から生成される水素をブラウン水素という場合があります。
ターコイズ水素
化石燃料を原料とし、天然ガスの主成分のメタンを使用して熱分解して水素を生成します。二酸化炭素は発生せず、固体の炭素が生成されるため、ブルー水素のような二酸化炭素の回収・貯蔵設備は不要です。この炭素を他で使用したり、貯蔵することが必要です。
イエロー水素
水を電気分解することによって水素を生成するため、生成方法はグリーン水素と同じですが、その電力は再生可能エネルギーではなく、原子力発電のものが使用されます。
原子力発電を推進する国では可能ですが、世界的な発展には課題があります。
ホワイト水素
様々な製品の製造プロセスで副産物として生成された水素(副生水素)です。また、地下に存在する天然の水素を示す場合もあります。
水素の輸送方法
日本国内の資源ポテンシャルは限定的なため、大規模な水素社会実現のためには、価格競争力のある海外水素の活用が必要になり、長距離輸送が不可欠です。
ただし、水素はそのままではエネルギー効率が悪いので、効率的に利用するために高圧による超圧縮、極低温による液化、パイプラインの利用、他の物質へ変換して輸送するなどの適切な手段をとる必要があります。また、そのままでは可燃性の気体であるため、注意が必要になります。
高圧輸送
高圧により圧縮して運ぶためには、高圧タンクが必要になります。しかし、水素には高圧で鋼鉄を脆化させる特徴があるので、一般的な鋼鉄ではなく、ステンレス鋼などの脆化に強い金属を使用する必要があります。水素を圧縮するには大きなエネルギーが必要になりますが、液化していないので、そのまま使用できる利点があります。
液化輸送
水素は液化することで体積が約1/800になるので、効率よく運ぶためには有効な手段です。天然ガスを液化するには-162度の極低温が必要ですが、水素ではそれ以上の-253度が必要になりますので、これまでの技術を更に発展させたものになります。タンクや構造には、優れた断熱性能が必要になります。
パイプライン輸送
都市ガスのようにパイプラインを使うことが考えられます。建設するコストは掛かりますが、決まった場所に大量の水素を輸送するには、とても有効な手段です。
前述のように水素は圧力が高くなるのと脆化の問題があるので、脆化の影響を受けにくい材料の配管が必要になりますが、条件により既設の天然ガスなどの配管が転用できる場合があります。
アンモニア輸送
水素をそのまま運ぶ場合は、超高圧や極低温などが必要になるため、他の物質に変換することで効率が上がります。その1つのアンモニアは水素と窒素を反応させて作成されます。
水素よりもエネルギー密度が高く、常温常圧では気体ですが-33度や20度でも8.5気圧で液化するため、水素に比べて少ないエネルギーで液化が可能です。輸送後に水素を取り出して利用するという方法がありますが、アンモニアのままでも火力発電の燃焼時に混ぜて二酸化炭素の排出量を削減する技術の開発が進められています。
MCH(メチルシクロヘキサン)輸送
トルエンと水素を反応させてMCHは生成されます。水素ガスと比べると体積は1/500で、常温・常圧で液体です。
また、MCHは350℃くらいで脱水素によりトルエンに戻るため、扱い易いという利点があります。消防法上はガソリンと同じ扱いになるので、既存の石油のインフラを活用することができます。再生エネルギーの利用が活発な海外で製造してMCHとして国内へ大量輸送し、脱水素して利用することが期待されます。
メタネーション
他の物質へ変換するということではメタネーションがあります。これは水素と二酸化炭素を反応させてメタンと水を生成する技術です。
メタンは都市ガスや天然ガスの主成分であるため、既存のインフラを活用できるという利点があります。また、原料の1つが二酸化炭素なので、再生エネルギーの余剰電力を使って水素を生成すれば、実質の二酸化炭素は増加しません。
伊藤忠テクノソリューションズの水素サプライチェーン関連ソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、プラントの配管や支持構造物等の設計に関わるソリューションを提供しており、水素サプライチェーンの構築を担う皆様のお手伝いをさせて頂いています。
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まとめ
水素は自動車・航空機・船舶など輸送に関わる燃料、火力発電に対する混焼や専焼、その他の分野でも利用が広がっていくことは確実です。
水素プラント設計には、それに対応した計算が必要で、当社ソリューションでは配管設計には『AutoPIPE』、架構設計には『STAAD.Pro』で対応が可能です。
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