材料科学とは? 材料設計・開発を効率化する取組み

材料科学とは? 材料設計・開発を効率化する取組み

現代の工業に影響する材料科学は、すべての“ものづくり”の基盤です。工業製品の材料・物質を研究・開発して、利用価値のある材料をつくり出すため、製造業を支える基幹技術といえます。

本記事では、材料科学の分野や研究内容とともに、材料科学の重要性について解説します。金属材料や無機材料を扱う企業で、材料科学を業務に生かしたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。


目次[非表示]

  1. 1.材料科学とは
  2. 2.材料科学の研究内容 
    1. 2.1.①金属材料
    2. 2.2.②無機材料
  3. 3.材料科学の重要性
  4. 4.材料科学を加速させるマテリアルズ・インフォマティクス 
  5. 5.伊藤忠テクノソリューションズが提供するソリューション
    1. 5.1.①ソフトウェアの提供とサポート
    2. 5.2.②計算材料設計のコンサルティングサービス
  6. 6.まとめ


材料科学とは

材料科学とは、工業製品の材料となる物質の性質や機能、特性を研究して、新たな機能を持った材料を開発する分野のことです。

材料科学で扱う材料は、金属・無機材料(ガラス・セラミックス)・プラスチックなど、多岐にわたります。材料科学で新たに生み出した材料が日常生活に欠かせないものになる可能性もあります。そのため、物質の特性を理解したうえで、高品質で生産しやすい材料にするために加工して生産することが求められます。

材料科学によって、これまでに開発された金属の材料には、以下が挙げられます。


▼材料科学によって開発された金属材料の例

  • 自動車に用いられる高張力鋼(ハイテン)
  • EV駆動用モータの磁石
  • リチウムイオン電池



材料科学の研究内容 

材料科学で研究・開発する内容のうち、主に2つの材料の研究内容について解説します。


①金属材料

金属材料とは、一般に鉄鋼や非鉄金属に分けることができます。

建築材料や機械の部品に多く使われている金属材料の処理・加工技術を発展させるための研究が行われています。

鉄鋼と非鉄金属の材料と特徴は以下のとおりです。


▼鉄鋼


特徴
用途
炭素鋼
  • 鉄と炭素の合金である鋼の一種
  • 低炭素鋼・中炭素鋼・高炭素鋼がある
  • ビル・橋などの建築素材
  • 自動車
  • 家電
  • 工具・金属部品 など
合金鋼
  • 炭素鋼をベースに複数の合金元素を合成した鉄鋼
  • ステンレス鋼・超硬合金・ハイテン鋼などがある
  • 自動車車両
  • エンジン部品
  • 船舶・鉄道車両
  • 切削工具・金型 など
鋳鉄
  • 炭素を多く含む鉄の合金
  • 白鋳鉄・ねずみ鋳鉄・CV鋳鉄などがある
  • 自動車部品
  • マンホール
  • 水道管 など


▼非鉄金属


特徴
用途
アルミニウム
  • 軽量・強い・サビにくい
  • 加工しやすい
  • 熱・電気を伝えやすい
  • フライパン・飲料缶
  • 航空機の構造素材
  • エンジン部品 など
  • 加工しやすい
  • サビにくい
  • 熱・電気を伝えやすい
  • 鍋・フライパン
  • 硬貨
  • 自動車の電子機器 など
亜鉛・亜鉛合金
  • 溶解温度が低く複雑な形に成形しやすい
  • 耐衝撃性に優れている
  • 精密機器・携帯機器の部品
  • おもちゃ など
チタン
  • 軽量・強い・サビにくい
  • 加工が難しい
  • 航空機用材料・建築材料
  • 眼鏡・腕時計・アクセサリー
  • ペースメーカー・インプラント など
マグネシウム
  • 実用金属のなかでもっとも軽量
  • 強度・剛性が期待できる
  • ノートパソコン・携帯電話
  • 車いす・杖
  • ステアリングホイール など
ニッケル
  • サビにくい・加工しやすい
  • 耐熱性に優れている
  • レーシングカーのマフラー
  • 調理器具
  • 医療機器 など


②無機材料

無機材料とは、一般に炭素以外の元素でできている化合物の総称です。


▼主な無機材料


特徴
用途
ガラス
ケイ酸塩を主体とする硬く透明な物質
気密性がある
酸・アルカリなど薬品に反応しにくい
建築物の窓・断熱材
車両の窓・ヘッドライト
液晶ディスプレイ
ハードディスク など
アルミナ
酸化アルミニウムを指しアルミニウムの原料にもなる
電気絶縁性・耐熱性に優れている
治具・絶縁部品
搬送アーム
ポンプ部品
真球ボール など
ジルコニア
耐熱性セラミックスの原材料
強度・靭性が期待できる
摺動部品
工業用カッター
ハサミ・包丁
宝飾品 など



材料科学の重要性

新たな材料を生み出す材料科学は、資源・エネルギー・環境問題などへの貢献が期待できます。

たとえば、プラスチックは日本の企業と大学による基礎研究によって、液晶分子の開発と高性能光学フィルムの製造技術の実装が可能となりました。

また、プラスチックを金属材料・無機材料と組み合わせて開発された“複合材料”は、航空業界や自動車業界で活用されています。このうち、炭素繊維系の材料は、湿度に強く低燃費であることから旅客機の部材に使われています。

このように、材料科学はさまざまな分野で活用されており、貢献度が高いといえます。そのため、今後も研究・開発を加速的に進めていく必要があります。

その取組み・手法として、“マテリアルズ・インフォマティクス”が、注目されています。



材料科学を加速させるマテリアルズ・インフォマティクス 

マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics、以下MI)とは、統計分析や人工知能などの情報科学の技術を活用して、材料開発をより効率化する取組み・手法のことです。

従来の材料開発においては、開発技術者のスキルや知識に依存していたことで、設計の過程を科学的に把握できずに、経験の蓄積や継承が難航していました。

これにより、設計にコストや時間がかかり、新たに材料を開発するまでに10年を要することもあります。

しかし、MIは情報科学を活用するため、材料開発までの期間を短縮でき、新たな材料の発見が期待されています。



伊藤忠テクノソリューションズが提供するソリューション

ここからは、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)が提供する2つのソリューションを紹介します。


①ソフトウェアの提供とサポート

CTCでは、材料開発に必要となる解析やシミュレーションを中心に、マルチスケールのソリューションを提供しています。


▼CTCが提供している解析やシミュレーションのソリューション

  • 多元系熱力学計算と状態図予測
  • 材料組織形成シミュレーション
  • 第一原理計算によるナノスケールシミュレーション
  • マルチスケールシミュレーション
  • 熱処理による形状変化・残留応力の予測


▼材料組織形成シミュレーション

材料組織形成シミュレーション


たとえば、多元系材料は実験で調べるには時間やコストがかかりますが、熱力学計算を可能とする“CALPHAD法”を用いることで容易に予測することができます。

CTCで提供しているソリューションにより、CALPHAD法を用いた熱力学計算技術や状態図予測技術を活用できます。


②計算材料設計のコンサルティングサービス

CTCでは、材料設計やプロセス最適化を行う際に、データベースや計算工学、そしてシミュレーションをフルに活用する“ICME(Integrated Computational Materials Engineering:計算材料設計技術)”の提供に特に注力しています。

ICMEを活用すると、実験やシミュレーションによって得られたデータを工学的に分析して、最短で最適な設計条件を導きます。熟練技術者の経験や実験の量などに基づいた従来の材料設計を、科学的な裏づけがあるものに置き換えられます。



まとめ

この記事では、材料科学について、以下の内容を解説しました。


  • 材料科学とは
  • 材料科学の研究内容
  • 材料科学の重要性
  • 材料科学を加速させるマテリアルズ・インフォマティクス
  • 伊藤忠テクノソリューションズが提供するソリューション


材料科学は、工業製品の材料・物質を研究して、利用価値の高い材料を開発するため、製造業を支える基幹技術といえます。

資源・エネルギー・環境問題など社会への役割に対しての貢献が大きいため、研究・開発 を加速的に進めていく必要があります。

『伊藤忠テクノソリューションズ』は、合金設計・材料プロセス設計など材料開発に必要なソフトウェア提供、および計算材料設計技術に基づくコンサルティングサービスを提供します。また今後、マテリアルズ・インフォマティクス展開にも取組んでいきます。

科学システム本部の提供するサービス詳細については、こちらもご参照ください。

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