温熱6要素とは?快適な環境の評価方法とともに解説
私たちが暑い、寒いと感じる温熱感覚は気温だけでなく湿度や気流なども含む6つの要素に影響を受けます。快適かつエネルギー消費の少ない環境を作り出すためにはこれらの要素を理解することが重要です。
この記事では、温熱6要素の概要や温熱環境の評価指標として活用されている等価温度について解説します。
温熱6要素とは
温熱6要素とは、私たちの温熱感覚に影響を与える要素のことです。環境側の要素である①気温、②湿度、③気流、④放射(輻射)と人体側の要素である⑤代謝量、⑥着衣量で構成されます。
① 気温
空気の温度です。暑い、寒いの感覚に影響を与える要素としてすぐに思い浮かぶと思います。夏期は25〜28℃、冬期は17〜22℃が快適範囲と言われています。
② 湿度
空気中の水分量です。湿度が高いと暑く感じ、低いと寒く感じます。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、熱が逃げづらいことが原因です。
③ 気流
空気の流れです。空気の流れがある場合は放熱と汗の蒸発が促進されるため涼しく感じます。
④ 放射(輻射)
太陽(日射)や周囲の壁などから伝わる熱です。暖かいものに手をかざすと、直接触れていなくても暖かく感じるのは放射の影響です。
⑤ 代謝量
人が活動することで発生するエネルギーです。met(メット)という単位で表現します。椅子に座って安静にしている状態の代謝量が1met、椅子の背もたれにもたれてリラックスした状態が0.8 met程度、車の運転が1.2 met程度、歩行が3 met程度と言われています。
⑥ 着衣量
衣服による保温性です。着衣の熱抵抗を表すclo(クロ)という単位が使用されます。clo値が大きいほど保温性が高く、体から熱が逃げにくくなります。
温熱環境の評価指標:等価温度
前述の6つの要素に影響を受ける温熱感覚を評価する指標として便利なのが等価温度です。
等価温度とは、人体の熱損失(熱の出入り)が実環境と等しくなる気流のない均一温度の環境を考えた場合に、その均一環境の温度のことを指します。例えば気温28℃で気流のある環境では等価温度は28℃より低くなります。仮に等価温度が25℃と計算された場合、その環境は気温25℃で気流のない環境と等価という意味になります。
等価温度は体感温度指標の1つであり、温熱環境の評価に用いることができます。例えばISO14505-2 (2006)では、自動車車室内の温熱環境評価指標として等価温度が温熱感覚・快適性との対応とともに定義されています。快適と感じる等価温度の範囲は部位や季節(着衣量)によって異なります。
実環境は気流や放射の条件が様々ですが、等価温度にはこれらを単一の指標で表現できるメリットがあります。
シミュレーションによる快適性の評価
等価温度の計算には皮膚の表面温度、放熱量(受熱量)、皮膚表面から環境までの熱通過率が必要となります。これらの値は計測で求める他に温熱環境シミュレーションにより計算することが可能です。
車室内の温熱環境に影響を与える要素
温熱環境シミュレーションは周囲雰囲気の温度や気流、日射(ガラスでの透過、反射及び吸収なども含む)などの熱環境条件から室内の温度や入熱量を計算する手法です。数値サーマルマネキンと呼ばれる人の代謝や着衣、発汗などを模擬する計算モデルを併せて用いることで温熱6要素をカバーした計算が実施され、等価温度も求めることができます。
各部位の等価温度計算例
温熱環境シミュレーションは実在しない環境であってもその環境がどれだけ快適であるか見積もることができるため、設計段階において快適かつエネルギー消費の少ない条件を検討する場合などに有用です。
伊藤忠テクノソリューションズの熱環境設計に関するソリューション
伊藤忠テクノソリューションズでは、熱環境設計における試作/実験回数の削減や手戻り削減、品質向上といった課題に対し、専門スタッフがシミュレーション活用による課題解決を支援しています。
技術トピックスとしてはこの記事で紹介した車内温熱環境、温熱快適性や自動車塗装工程における焼付乾燥炉の検討などが代表的です。
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まとめ
この記事では、温熱環境について以下の内容を解説しました。
- 温熱6要素の概要
- 温熱環境の評価指標:等価温度
- シミュレーションによる快適性の評価
- 伊藤忠テクノソリューションズのソリューション
温熱6要素とは気温や湿度、代謝量など私たちの温熱感覚に影響を与える要素のことであり、快適な環境を考える際に重要な要素です。等価温度は温熱環境の評価指標の1つであり、気温や気流、放射の影響を単一の指標で表現できるメリットがあります。
等価温度は温熱環境シミュレーションで計算することができ、設計段階において快適かつエネルギー消費の少ない条件を検討する場合などに有用です。
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