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BIM/CIMの原則適用について BIM/CIM導入の効果と課題点

2023年より、国土交通省が発注する業務・工事においてBIM/CIMの原則適用が始まりました。 本稿では、BIM/CIM原則適用に関連して、BIM/CIMモデルの導入の効果・課題点等について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.BIM/CIMモデルとは
  3. 3.BIM/CIM導入における効果
  4. 4.BIM/CIMモデル作成における課題点
  5. 5.BIM/CIMモデル作成におけるCTCのソリューション
  6. 6.おわりに


はじめに

2023年4月から、国土交通省が発注する業務・工事において、BIM/CIMの原則適用が始まっています(図 1)。原則適用とは、特段の事情がない限り、BIM/CIMを適用することを原則とすることを意味していて、原則適用の対象となる業務・工事は、下記のとおりです。
・土木設計業務共通仕様書に基づき実施する設計及び計画業務
・土木工事共通仕様書に基づく土木工事
(河川工事、海岸工事、砂防工事、ダム工事、道路工事)
・上記に関連する測量業務及び地質・土質調査業務

図 1:令和5年度からのBIM/CIM原則適用

 図 1:令和5年度からのBIM/CIM原則適用

(画像引用元:国土交通省 第10回 BIM/CIM推進委員会 資料1)


BIM/CIMモデルとは

BIM/CIMモデルは、3次元モデル、属性、参照情報の3つの要素から構成される情報の集合体です。BIM/CIMモデルには、以下の3つの要素が含まれます。
 
① 3次元モデル
3次元モデルとは、構造物の形状や寸法、位置関係などを3次元空間で表現したものです。3次元モデルを用いることで、構造物の外観や内部構造を視覚的に把握したり、設計変更や干渉の有無などのシミュレーションを行ったりできます。
 
② 属性情報
属性情報とは、3次元モデルの各要素に付与された詳細な情報です。例えば、壁や柱などの部材には、材質や強度、重量などの物理的な特性や、製造元や価格などの経済的な特性が属性情報として付与されます。属性情報を用いることで、構造物の性能やコストなどを分析したり、資材や工事の発注や管理を行ったりできます。
 
③ 参照情報

参照情報とは、3次元モデルや属性情報と関連付けられた外部の情報です。例えば、設計図や写真、測量データや点群データ、その他工事に関係する外部ファイルなどが参照情報として3次元モデルにリンクされます。参照情報を用いることで、構造物の設計や施工における基準や要件を確認したり、現場との情報共有や連携を行ったりできます。

図 2:BIM/CIMモデルのイメージ


BIM/CIM導入における効果

BIM/CIMは、各フェーズの効率化や品質向上、コスト削減などの効果をもたらすと期待されています。本章では、BIM/CIMを導入した際の、各フェーズ(設計、施工、維持管理)における期待される効果について解説します。
 
① 設計フェーズで期待される効果
・設計の精度や可視化が向上する
・コストや工期などを属性に付加することで、予算やスケジュールの管理が可能になる
・BIM/CIMモデルを施工や維持管理のフェーズに引き継ぐことで、情報の一貫性や連携が高まり、品質や安全性の確保に寄与する
 
② 施工フェーズで期待される効果
・現場で利用することで品質の向上や工期遅延の可視化などに役立つ
・施工の実績や検査の結果などを属性に追加することで、施工の進捗や状況をリアルタイムに把握できる
・BIM/CIMモデルを維持管理のフェーズに引き継ぐことで、施工履歴や品質の証明になる
 
③ 維持管理フェーズで期待される効果
・施工の情報を属性に付与することで、構造物の現状や履歴を正確に把握できる
・維持管理の計画や実施の情報を属性に付加することで、維持管理の効率化や最適化が可能になる
・損傷や劣化の情報を属性に追加することで、修繕の必要性や時期の予測に役立てられる

図 3:BIM/CIMの各フェーズでの適用

(画像引用元:国土交通省 BIM/CIMポータルサイト BIM/CIM原則適用に係る参考資料(R5.3))


BIM/CIMモデル作成における課題点

BIM/CIMモデルの作成には、専用のソフトウェアを用いる必要があります。そのため、専用のソフトウェアやツールの活用方法の習得や、ソフトウェアを利活用する人材を確保する必要がありますが、これが障壁となっており、多くの課題があります。
 
① 3次元モデル作成における課題
・3次元モデルの作成には、技術や知識が必要であり、その教育や研修の体制が十分ではない。
・3次元モデルの作成には、多くの時間やコストがかかる。
 
② ソフトウェア選定、スキル、人材における課題
・BIM/CIMモデルの作成において、どのソフトウェアを使ってよいかわからない。
・スキルや人材の育成には、教育や研修の機会や資源が必要だが、それが不十分。
・BIM/CIMモデルの作成に用いるソフトウェアにおけるデータの互換性が低い。
・BIM/CIMモデルの作成に用いるソフトウェアの操作や設定が複雑で、使い勝手が悪い。
 
③ 属性や参照情報
・属性や参照情報の収集や入力は、人的なミスや遅延が発生しやすく、その品質や信頼性が低下する。
・属性や参照情報の更新や変更は、頻繁に発生するが、その追跡や反映が困難。
・属性や参照情報をどのように利活用してよいかわからない。


BIM/CIMモデル作成におけるCTCのソリューション

CTC科学システム本部はBIM/CIMモデル作成の課題点に関するソリューションとして、様々なソフトウェアを提供しています。以下に、主要なソフトウェアをご紹介します。

 
① :3次元土木地質CAD/GISソリューション「GEORAMA for Civil3D」

GEORAMAは、3次元地盤・地質モデルを作成するソフトウェアであり、調査ボーリングや地質断面図などの断片的なデータから、整合性が取れた3次元地質モデルを効率的に作成可能です。


②:3D属性管理ソフトウェア「Navis+」
CAD等で作成した3Dモデルに、Excelなどで編集した設計・施工・計測情報、修繕・点検情報、画像・ドキュメント類の属性情報を、施工段階に応じて付加することができます。


③:施工現場見える化サービス「C-シリーズ」
C-シリーズは、掘進管理などの施工に関する各種システムのデータやExcelなどで入力した情報から、3次元モデルを自動生成し、工事工程を可視化することで、施工状況を可視化することを可能にします。工種別に「C-Shield」(シールド工事)、「C-Grout」(地盤改良工事)、「C-土工」(土工転圧工事)を提供しています。


おわりに

BIM/CIMモデルは、建設業界のイノベーションを促進する有力なツールです。しかし、BIM/CIMモデルを導入・活用するにあたっては、多くの課題があります。これらの課題を解決するためには、ソフトウェアの特徴や性能を比較検討し、また採用や教育を行うなどの取り組みが必要です。BIM/CIMモデルの導入は、簡単なことではありませんが、その効果は大きいと言えます。


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