超音波洗浄とは?電子部品の最適な洗浄効果を実現するシミュレーション事例をご紹介
超音波洗浄による電子部品の最適な洗浄を実現するシミュレーションについてご紹介します。
超音波洗浄は、微細な振動によって汚れや付着物を効果的に除去する洗浄技術です。しかし、電子部品の洗浄は特に課題があります。
今回は、超音波洗浄シミュレーションの重要性と洗浄装置の最適化事例について解説します。
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超音波洗浄とは?
超音波洗浄の原理
超音波洗浄とは、最適な洗浄を実現するための洗浄技術です。洗浄物には微細な汚れや付着物がありますが、超音波洗浄は振動によってこれらの汚れを効果的に除去する方法です。
超音波の特性により、物体を微細な振動で揺らし、汚れを取り除くことができます。これにより、洗浄物を効果的に洗浄し、品質を向上させることができます。超音波洗浄は、製造プロセスで必要とされる洗浄方法の一つとして、重要な役割を果たしています。
超音波について詳しく知りたい方は下記記事をご参照ください。
超音波洗浄の利点超音波洗浄は、複雑な形状をした物体や目に見えない汚れにも優れた効果を発揮します。要するに、超音波洗浄は高度な洗浄が必要な分野で信頼性のある洗浄方法として利用されているのです。
ただし、実際に超音波洗浄を利用すると、期待通りの効果が発揮されない場合もあるので注意が必要です。
電子部品の洗浄における課題
電子部品の洗浄における課題:電子部品に残留する汚れや微小なパーティクルは、電子部品の性能や信頼性に悪影響を及ぼすため、注意深く確実に取り除く必要があります。
しかし、洗浄方法によっては、十分に取り除けず、電子部品の性能や信頼性に悪影響を及ぼす可能性がありました。さらに、電子部品の製造プロセスは非常に高度であり、微小な洗浄の変化も大きな影響を与えます。だからこそ、電子部品の洗浄においては、高度な洗浄が求められています。
超音波洗浄シミュレーションの重要性
超音波洗浄効果のシミュレーションへの適用手順
超音波洗浄シミュレーションは、電子部品の最適な洗浄を実現するために非常に重要です。なぜなら、電子部品の洗浄には課題が存在し、その課題を解決するためには洗浄方法および洗浄装置を最適化する必要があるからです。
超音波洗浄シミュレーションによって、洗浄装置内の超音波可視化や音圧の分布を把握することができます。これにより、洗浄物の位置や超音波ノズルの位置を最適化し、洗浄効果を最大化することができます。
また、シミュレーションを行うことで、洗浄物と超音波の相互作用を理解し、洗浄方法や洗浄液の種類を検討する上でも重要な情報を得ることができます。
総括すると、超音波洗浄シミュレーションは電子部品の洗浄において非常に重要であり、最適な洗浄を実現するために欠かせない手法です。
洗浄装置の最適化事例
シミュレーションによる洗浄装置の最適化事例に関してご紹介します。
水槽内音圧むらの再現および平滑化手法検討
水槽内音圧むらの再現および平滑化手法検討用解析モデル
超音波洗浄装置の最適化において、水槽内の音圧むらを再現することは非常に重要です。
音圧むらがあると、洗浄物の洗浄効果に影響を与える可能性があります。そこで、このシミュレーションでは水槽内の音圧分布を計算し、音圧むらが再現されることを確認しました。
また、音圧を平滑化する手法も検討しました。なぜなら、音圧が平滑化される方が洗浄物の洗浄むらがなくなり、洗浄物へのダメージも低減されると考えられるからです。その結果、複数の周波数を組み合わせることによって音圧を平滑化する効果があることが分かりました。
洗浄物が水槽内超音波強度に及ぼす影響検討
洗浄物が水槽内超音波強度に及ぼす影響検討用解析モデル
次に、洗浄物が水槽内超音波強度に及ぼす影響を評価しました。
28kHz+75kHzの複数周波数での洗浄物あり、なしの音圧分布解析結果
洗浄物の位置や周波数の違いによって、洗浄物への超音波音圧分布が変わることが分かりました。特に洗浄物の裏側にも音圧が発生することが明らかになりました。
メガソニックによるスポット洗浄解析例
洗浄物の裏側の音圧が低下すると、裏側の洗浄効果も低下する可能性があります。したがって、適切な周波数を複数組み合わせることで、裏側の洗浄効果を高めることができます。この解析結果は、洗浄装置の最適化において重要な情報となります。
最後に、メガソニックによるスポット洗浄の解析例を紹介します。洗浄物の位置や超音波ノズルの位置を変えて洗浄を行い、その効果を可視化しました。ここでは、シリコンウエハ上の振動状態を観察しました。
この解析結果からわかったことは、水中の音圧分布だけでなく、洗浄物自体の振動も洗浄効果に寄与しているということです。また、シリコンウエハの振動分布を把握することで、洗浄効果を高めるための効率的な洗浄方法を検討する上で重要な情報を得ることができます。
メガソニックによるスポット洗浄解析用解析モデル
以上の解析事例からわかるように、洗浄方法および超音波洗浄装置の最適化にはシミュレーションが欠かせません。シミュレーションによって洗浄物の洗浄効果を予測し、最適な洗浄条件を見つけ出すことができます。
また、シミュレーション結果に基づいて洗浄装置を改善することで、洗浄効果を最大限に引き出すことが可能です。
伊藤忠テクノソリューションズの超音波に関するソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、溶接部の検査や車室内防犯センサー、各種部品の超音波洗浄など、超音波ソリューションの適用範囲で受託解析・開発・コンサルティングを行っています。
また、超音波シミュレーションコード『ComWAVE』の販売(サブスクリプション)も行っています。
ComWAVEはほかのCAE(※)ソフトでは実現できない100億要素規模の大規模な超音波伝搬解析をクラスタパソコン上で高速に実行できるようにした画期的なシミュレータです。ネジのような小さな対象物から航空機ボディのような大きな対象物まで、あらゆる形状や大きさの物の微細な分析や解析を効率よく実施できます。
※CAE(Computer Aided Engineering:計算機援用工学)とは、コンピューターを使って設計の妥当性を検討・評価する手法全般のこと。
まとめ
超音波洗浄による電子部品の最適な洗浄を実現するシミュレーションについて、いくつかのポイントをまとめました。
電子部品の洗浄における課題や超音波洗浄の利点について説明しました。また、超音波洗浄シミュレーションの重要性を強調し、洗浄方法および洗浄装置の最適化事例を紹介しました。
このシミュレーションにより、超音波洗浄の効果を最大限引き出すための情報を得ることができることが示されました。洗浄層内および洗浄物を入れた際の音圧分布や洗浄効果の影響について詳しく探求しました。
これにより、超音波洗浄で重要なパラメータや装置の設計に関する改善点が明確になり、効率的な洗浄を実現することが示されました。
超音波洗浄シミュレーションは、洗浄効果を最適化するために不可欠なツールです。シミュレーションの結果から得られた情報を活用することで、効果的な洗浄装置の設計やパラメータ設定を行うことができます。このため、電子部品製造などの分野で重要な役割を果たすことが期待されます。
今後超音波洗浄の高度化が進むにつれて、シミュレーションの活用がますます広がることでしょう。
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