超音波流量計とは?流量計測を実現するシミュレーション事例をご紹介
多くの製造現場では、製品が完成するまでに、冷却水、油、工業用水、ガスなど様々な流体が用いられています。決められた品質を維持し、熱循環管理により生産性と安全性向上につなげるため、流体の流れるスピード(=流量)を正確に計測することは極めて重要となります。
ここでは、超音波流量計とは何か、そして、超音波流量計による配管などの流量計測/可視化を実現するシミュレーションについてご紹介します。
目次[非表示]
流量とは
流量は「単位時間に流れる流体の体積又は質量」と定義づけられています(JIS B 0100:2013 より)。つまり、”xx秒間に○○㎥ の液体/気体が流れたか" を表す物理量となります。
流量計とは
流量を測定する計測器を流量計と呼びます。測定の目的、場所、あるいは、流体の状態、種類、用途、に応じて、様々な計測方法が用いられています。
流量計の種類
流量計について、例として、
- カルマン渦流量計
- タービン流量計
- コリオリ流量計
- 容積流量計
- 熱式流量計
- 電磁流量計
などが代表的な計測器の種類として挙げられます。そのような数ある計測機器/手法のなかで、超音波流量計による測定について取り扱います。
超音波流量計とは
超音波流量計とは、超音波を用いた流量計測器であり、管外にセンサを設置し管内部の流量を計測する方式をとるものになります。
詳細の測定方式としては、下記2点が主に用いられます。
伝搬時間差方式
流れの上流、下流にそれぞれ超音波センサを設置したうえで、上流側から発信した超音波を下流側で受信したときの伝搬時間と、下流側から上流側への伝搬時間を計測し、その伝搬時間差から流速を計算。さらに断面積、補正係数を蒸散して流量を算出する方式。河川の流量調査などでは主にこちらの方式を採用。
ドップラー方式
入射超音波の周波数と、流体中の気泡などによる反射エコーの周波数との差によって流速を計算→流量への換算を行う方式。工場排水の流量管理などでは主にこちらの方式を採用。
また超音波流量計の長所としては、
- 圧力損失がない
- 管の外に設置できるため、非接触/非破壊的に計測が可能
といった点が挙げられます。なお、超音波について詳しく知りたい方は下記記事をご参照ください。
超音波流量計測に関する数値シミュレーション
製造業等の現場で超音波流量計を使用するにあたっては、プローブ設計の最適化や、最適な設置場所の検討が必要不可欠となってきます。
そこで、あらかじめ、送受信子、管、液体、流量などを模擬した数値シミュレーションを行うことにより、各種パラメータ(指向性、周波数、入射角度、座標など)について調べておくことが、とても有用と言えます。
ComWAVEを用いた超音波流量計測シミュレーション
超音波シミュレーションソフトウェア『ComWAVE』を使用頂くと、有限要素法(FEM)を用いた、超音波に関する各種シミュレーションを行うことができます。またそのなかで、超音波流量計測のシミュレーションにも対応しております。
ここでは、解析事例「流れを考慮した超音波流量計の解析」をもとに、そのシミュレーションの様子の一端をお見せします。
シミュレーションの手順としては、下記のような操作を行います:
1)ComWAVE上で解析モデルの形状、配置を定義し、メッシュを生成します
2)流れ場について設定します(均一流れ定義、流れ速度勾配定義いずれにも対応)
3)材料物性、入力波形、その他、解析実行時に必要となる各種パラメータを定義し、解析を実行します
4)解析終了後、伝搬図、受信波形など、結果を可視化することができます
当該事例においては、種々のケースについて、計算機上で解析実行することにより、流れ場の有無によって、波の伝搬経路、および、到着時刻が変化する様子が確認できました。
このような事例を応用することで、配管の物性、形状、大きさ、や、液体の物性、流量など、様々にパラメータを変更した場合における、プローブの最適配置、入射波の最適設計について迫ることが可能となっております。
伊藤忠テクノソリューションズの超音波に関するソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、溶接部の検査や車室内防犯センサー、各種部品の超音波洗浄など、超音波ソリューションの適用範囲で受託解析・開発・コンサルティングを行っています。
また、超音波シミュレーションコード『ComWAVE』の販売(サブスクリプション)も行っています。ComWAVEはほかのCAE(※)ソフトでは実現できない100億要素規模の大規模な超音波伝搬解析をクラスタパソコン上で高速に実行できるようにした画期的なシミュレータです。ネジのような小さな対象物から航空機ボディのような大きな対象物まで、あらゆる形状や大きさの物の微細な分析や解析を効率よく実施できます。
※CAE(Computer Aided Engineering:計算機援用工学)とは、コンピューターを使って設計の妥当性を検討・評価する手法全般のこと。
まとめ
本稿では、超音波流量計の用途、種類、測定原理、および、その数値シミュレーションについて、ComWAVEを用いた例をご紹介致しました。今後も、インフラ整備、ものづくりなど様々な場面で超音波流量計、あるいは、その計測手法は欠かせない要素となることが予想されますので、我々としてもより一層、力を入れて参る所存です。
また、流量計以外にも、超音波を利用した種々の検査に関する数値シミュレーションについて、ComWAVEにて取り扱うことができます。超音波検査とシミュレーションの理解は、品質向上や製品開発において重要であり、産業界で今後ますます活用される技術と考えられます。これらの技術の発展により、品質管理や不良箇所の発見がより効率的に行われることが期待されます。
【関連記事】