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流体力とは?流体力を考慮した配管設計について解説

工場やプラントの設備には、水や化学薬品などの液体が流れる配管が備わっています。これらの配管には自重や熱膨脹、地震、内部流体の動きなどにより荷重が作用するため、荷重を加えても安全基準を満たした設計になっているか、事前に評価することが重要になります。

この記事では、水などの流体によって引き起こされる力である流体力を考慮した配管設計の重要性、そしてシミュレーションツールによる流体力の検討について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.流体力とは
    1. 1.1.流体力を考慮した配管設計の重要性
  2. 2.シミュレーションツールによる流体力の検討
  3. 3.伊藤忠テクノソリューションズの流体解析サービスのご紹介
  4. 4.まとめ


流体力とは

流体力とは、水などの流体によって引き起こされる力を意味します。例えば、配管の中を水が流れているときにバルブ等で流れを急に遮ることで、バルブや配管の中を衝撃が伝わることがイメージできると思います。この水圧が流体力であり、内部流体の荷重として配管系に影響を及ぼします。

流体力のイメージ


流体力を考慮した配管設計の重要性

流体力の発生要因は流体の運動量の変化、流体の重さ、そして配管前後の内圧の差などがあります。例えば、ポンプの急停止やバルブの急閉止で配管内部の流体の速度が急激に変化すると、圧力が急上昇するウォーターハンマー現象が発生します。そして、ウォーターハンマーが発生することで流体力、すなわち内部流体による配管へ加わる荷重が顕著になります。

ウォーターハンマーの詳細については、こちらをご覧ください。

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流体力による荷重の影響が大きくなることで、配管の破損や接続部分の緩みによる水漏れが発生し、重大なトラブルにも繋がります。そのため、流体力を考慮した配管設計を行うことが重要になります。

しかし、ポンプの運転やバルブの開閉の状態は時々刻々と変更するため、流体力もそれに伴い変化します。また複雑な管路網の場合、手動で管路全体での流体力を把握するのは非常に困難になります。そこで、シミュレーションツールを活用することで、流体力と配管に加わる荷重を精度よく効率的に検討することができます。


シミュレーションツールによる流体力の検討

シミュレーションツールの中には、配管内部の流体の状態を計算できるものがありますが、特に1次元熱流動解析ソフトウェアは計算コストが低く、また複雑な管路網でも流れの全体像を把握することができます。そして、ウォーターハンマーなど、時刻歴で変化する管路網全体の流体力を精度よく効率的に検討することができます。

1次元熱流動解析の詳細については、こちらをご覧ください。

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下図は、1次元熱流動解析ソフトで再現した配管経路の例になります。経路にある制御バルブが時刻歴毎に全開から全閉に閉鎖する様子と、バルブ閉鎖時に発生する流体力を検討したものになります。1次元熱流動解析ソフトウェアを活用することで、手動で計算するのが困難な流体力を算出することができます。その結果、配管経路中で流体力の影響が一番大きい箇所を検討、特定することができ、効率的かつ安全な設計評価が可能になります。


1次元熱流動解析ソフトによる流体力検討のイメージ


また、1次元熱流動解析ソフトウェアと別のシミュレーションツールを連携することで、より精度の高い荷重計算を行うことができます。例えば、配管の自重や熱膨脹、地震、流体力による荷重を計算することができる配管応力解析ソフトウェアがあります。

下図は、配管応力解析ソフトウェアに先程の流体力の結果を取り込み、配管の荷重計算を行った結果になります。自重や地震の荷重に加え、流体力が配管経路に及ぼす荷重を考慮することで、より安全な配管設計の評価が可能になります。また、配管の破損や変形などのトラブルが発生した際に、精度の高いトラブルの検証を行うことができます。


配管応力解析のモデルに流体力を反映した時の荷重検討のイメージ


伊藤忠テクノソリューションズの流体解析サービスのご紹介

伊藤忠テクノソリューションズでは、配管設計における1次元熱流動解析や配管応力解析のソフトウェアの提供とサポート、受託解析サービスを提供しています。

この記事でご紹介した流体力を考慮した配管設計について、詳しくは下記資料をご覧下さい。


まとめ

この記事では、流体力を考慮した配管設計の重要性、そしてシミュレーションツールによる流体力の検討について以下の内容を解説しました。

  • 流体力とは
  • 流体力を考慮した配管設計の重要性
  • シミュレーションツールによる流体力の検討

配管設計では、流体力が及ぼす配管への荷重の影響を考慮することで、重大なトラブル防止に繋がります。そして、シミュレーションツールを活用することで、流体力の計算や配管荷重の検討を効率的に行うことが可能です。

今後も、このようなシミュレーションを駆使した配管設計のサービスについて展開して参りますので、是非ご期待ください。


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