コンクリートのひび割れと耐震性:理論と解析手法を紹介
コンクリートの構造的特性や耐震性について、解析の観点で紹介します。コンクリートは圧縮と引張による挙動が大きく異なり、圧縮力はコンクリートが、引張力は鉄筋が分担することで構造物を支える代表的な材料です。
また、プレストレスを与えることで引張力を抑制することが可能となります。このように圧縮と引張で挙動が異なることからコンクリート構造物の耐震性を評価するためには、非線形解析が重要となります。この記事では、それぞれの手法の概要や使用例について紹介していきます。
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コンクリートとは
コンクリートは、セメントに水、砂利や砂などの骨材等を混ぜて生成され、材齢を経て硬化する材料です。圧縮と引張による挙動が異なるため圧縮力はコンクリート自身が、引張力は鉄筋が分担することで構造物を支える代表的な材料です。
さらに、プレストレスを与えることにより引張力を低減させ、ひび割れの発生を抑制することが可能になります。コンクリートは、引張力を受けるとひび割れが発生します。一度ひび割れが発生すると、ひび割れた部分は力の伝達が無くなりますが、圧縮はひび割れが閉じることで力が伝達します。つまり、力の方向により挙動が異なるという事象が発生します。
コンクリート構造物の特徴
コンクリートは引張に対してひび割れが発生してしまうため、鉄筋を組み合わせることで、圧縮にも引張にも抵抗できる構造部材になります。地震など繰返しの載荷があった場合、ひび割れ前とひび割れ後で挙動が異なり、力の伝達経路が変化することになります。
コンクリートのひび割れは、鉄筋の腐食に深刻な影響を与えるため、ひび割れを発生させないような設計が必要ですが、近年の構造物の設計では、構造物が保有する性能を評価するという流れになっており、ひび割れを考慮した非線形解析を実施して照査をすることで、より精度が高い性能評価が可能となります。
コンクリートのひび割れ
コンクリート構造物を照査する場合、骨組みモデルによる断面力照査や、有限要素法による応力照査などがありますが、ここでは、有限要素法による解析手法について紹介します。
有限要素法は、構造物を離散化して力と変位の関係式を計算しますが、コンクリート非線形解析では、ひび割れを一つ一つモデル化する離散ひび割れモデルと、ある領域に分布されたひび割れを考慮する分散ひび割れモデルに大別できます。離散ひび割れモデルの場合、ひび割れ発生箇所をあらかじめ設定する必要があり汎用的な計算には不向きです。一方、分散ひび割れモデルは、ひび割れ発生位置を考慮する必要がなく、一般的な構造解析に適用が容易となっています。同様に鉄筋のモデル化についても、鉄筋を1本1本モデル化する場合と、領域を指定して鉄筋比を設定することが可能になっています。
鉄筋とコンクリート間の付着が切れ滑る現象まで計算する場合は鉄筋を個々にモデル化する必要があります。一般的な構造解析では、分散ひび割れモデルを適用することが多く、鉄筋のモデル化については、主鉄筋を個々にモデル化し、帯筋は鉄筋比を与えるなど、モデル規模や鉄筋の配置などによりそれぞれを使い分けすることがあります。さらに、材料の構成式(ひずみと応力の関係式)について、コンクリート材料の特性を考慮することで計算することが可能になります。
有限要素法に関して詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
鉄筋コンクリートの構成則
鉄筋コンクリートの構成則は、破壊基準、ひび割れモデル、圧縮特性、引張特性およびひび割れ後のせん断伝達特性などがあります。代表的なモデルについて、破壊条件は、シェル要素の二軸応力下、ソリッド要素の三軸応力下では、通常応力時とは異なる特性となり、ひび割れ発生後は、圧縮特性の劣化を考慮して、強度と強度時のひずみを低減することがあります。ひび割れはひび割れ方向とそれに直交する方向を軸に持つ座標系をひび割れ軸と定義し、多方向のひび割れが表現できるように、既存のひび割れ面となす角度が一定以上の場合に新たなひび割れ座標を生成します。
鉄筋とコンクリートの付着を考慮したテンションスティフニング特性は、複数のモデルが提案されており、鉄筋要素とコンクリート要素間で設定された付着要素で設定する場合と、コンクリート引張側の軟化特性に付着特性を考慮した特性を定義する方法などがあります。ひび割れ後のせん断伝達特性については、コンクリートの一軸圧縮強度、鉄筋量、ひび割れ直交方向ひずみなどに影響されるモデルなどがあります。
コンクリート構造物の耐震性の評価
コンクリートの耐震性の評価 コンクリート構造物の耐震性は非常に重要です。地震などの自然災害による構造物への負荷は、その耐震性評価が不十分な場合には深刻な被害をもたらす可能性があります。 したがって、コンクリート構造物の耐震性を評価するためには、非線形解析が重要となります。
非線形解析は、通常の荷重状態を超える荷重下での挙動を把握することができます。ここでは有限要素法による検討について紹介します。適切な解析モデルを構築し、非線形解析を実施することにより、コンクリート構造物の耐震性を評価することができます。適切な解析モデルを構築するには、構造物の特性に沿った要素を用いて離散化し、境界条件、荷重条件や鉄筋のモデル化設定が必要になります。さらに、材料構成則やひび割れモデルを選定するために知識と経験を必要とします。 CTCではコンクリート構造物の非線形解析サービスを提供しており、お客様の耐震性評価のお手伝いが可能となっております。
伊藤忠テクノソリューションズのコンクリート構造物非線形解析アウトソーシングサービス
CTCでは、コンクリート構造物の非線形解析を実施するために、非線形FEM解析プログラム『FINAL』および『FINAS/STAR』を用意させて頂いております。コンクリートおよび地盤の非線形を同時に考慮した計算も可能となっております。安心・安全な社会を構築するため、ぜひCTCの解析サービスをご利用ください。
詳しくは下記よりお問い合わせください。
まとめ
コンクリートの耐震性の評価を検討する際の非線形解析では、コンクリートの特性を考慮し、ひび割れや圧壊などの挙動をシミュレーションすることができます。CTCでは、コンクリート構造物の非線形解析サービスを提供しており、設計課題や現象に応じた最適な解析手法や条件を提案します。解析アウトソーシングを活用することで、コンクリート構造物の耐震性を向上させることができます。
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